研究実績の概要 |
Target gene候補にSemaphorinやEphrinなど軸索伸長抑制因子を複数含むmiR-145の投与が脊髄損傷後の修復促進効果について検討した。 前年度の研究で、脊髄損傷部へmiR-145を投与するタイミングとして、損傷後3日以降での投与でmiR-145の取り込みが上昇し、脊髄機能回復が改善されることが分かったため、本年度の研究は損傷後3日以降の投与での実験を行った。 損傷後42日において経頭蓋電気刺激による後肢筋電位を測定し、振幅を評価したところ、損傷後7日の投与群において特に筋電位の振幅が高く、コントロールとの有意差を認めた。Dynamic Plantar Aesthesiometerを用いた感覚機能の評価では、損傷後3日での投与群において反応時間の延長を認めたが、他の群との有意差は認めなかった。 脊髄損傷部でのmiR-145のtarget geneを明らかにするためにmiR-145投与翌日の損傷部組織で候補遺伝子についてreal-time PCRやWestern blottingによる発現レベルの評価を行った。Real-time PCRでは、Sema-3A, Sema-6A, ROCK1, Ephrin-B3, Plexin-A2, Netrin-4,GAP1, GAP2, GAP3の発現レベルの評価を行ったが、miR-145投与群とコントロール群との間に有意差は認められなかった。一方、Western blottingによる発現レベルの評価では、miR-145投与によってSema-3Aの発現が著明に抑制されていた。また脊髄損傷部におけるEphrin-B3およびSema-3Aの免疫染色を行うと、miR-145投与群ではコントロール群に比べて、これらの因子の陽性面積が小さかった。これらのことから、miR-145の投与はmRNAレベルではなく、タンパクレベルにおけるEphrin-B3およびSema-3Aの発現を抑制していると考えられた。
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