研究課題/領域番号 |
25293325
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩本 幸英 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00213322)
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研究分担者 |
小田 義直 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70291515)
山田 久方 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (20363369)
岡田 誠司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30448435)
福士 純一 九州大学, 大学病院, 助教 (40444806)
松本 嘉寛 九州大学, 大学病院, 助教 (10346794)
松延 知哉 九州大学, 大学病院, 助教 (20543416)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 癌 / トランスレーショナルリサーチ / マイクロアレイ / 薬剤反応性 |
研究実績の概要 |
骨肉腫(Osteosarcoma: OS), Ewing肉腫(Ewing's Family of Tumor: EFT)などに代表される肉腫は、若年者に好発する極めて悪性度の高い腫瘍である。近年の系統的化学療法導入により、飛躍的な生存率の向上が得られている。しかし、薬剤耐性化を来たし化学療法の奏功しない症例では、集学的治療にも関わらず依然予後は極めて不良である。さらなる治療成績向上のためには、肉腫における薬剤耐性獲得機構の解明が必須である。本研究では、肉腫の細胞自律的および非細胞自律的な薬剤耐性獲得メカニズムを解明し、治療成績向上のための基盤研究を以下のステップに分けて検討する。(1)肉腫細胞の細胞自律的な機構の解析、(2)周囲間質環境からの肉腫細胞への働きかけによる非細胞自律的な機構に対する分子細胞生物学的および臨床検体を用いた解析、(3)肉腫細胞を用いた薬剤耐性動物モデルを用いた、既存の抗腫瘍薬と薬剤耐性獲得機構を阻害する分子標的治療の組み合わせによる、新規の薬剤耐性克服治療の可能性を探索する。
26年度は、肉腫細胞の細胞自律的な薬剤耐性化獲得メカニズムの解明を細胞株に対する抗癌剤長期曝露を進めた。既に確立済みであった、OS, EFTの薬剤耐性株(耐性株)に加え、軟骨肉腫(Chondrosaroma: CS)、滑膜肉腫 (Synovial sarcoma: SS)、悪性神経鞘腫腫瘍 (Malignant peripheral nerve sheath tumor: MPNST)の耐性株、及び約400種類に及ぶ薬剤ライブラリーを用いて耐性克服が可能となる薬剤をスクリーニングした結果、MAPK経路阻害剤、プロテアソーム阻害剤などにより薬剤耐性が克服される可能性が示唆された。過去に本研究に類似した、CS, SS, MPNSTの耐性株を用いた大規模な薬剤耐性克服実験の報告はなく、画期的な成果と考えられる。また、肉腫細胞にてGFPを発現させることで、各種肉腫細胞と骨髄間質細胞(Bone marrow stroma cell: BMSC) を共培養し、肉腫細胞のみの増殖を解析可能な実験系も確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、前述のように肉腫の薬剤耐性獲得機構を以下の3ステップに分けて検討する予定である。(1)肉腫細胞の細胞自律的な機構の解析、(2)周囲間質環境からの肉腫細胞への働きかけによる非細胞自律的な機構に対する解析、(3)肉新規の薬剤耐性克服治療の可能性の検討。本年度は(1)のステップが順調に進捗し、前臨床段階へ応用可能な候補薬剤が同定できると共に、ステップ(2)の解析準備も終了しており予定通りの達成度と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、(1)の肉腫細胞の細胞自律的な薬剤耐性克服に対しては、既にスクリーニングにて抽出されたMAPK阻害剤、プロテアソーム阻害剤などを用いて、克服メカニズムのin vitroでの詳細な解析、さらには担癌マウスモデルを用いたin vivoの解析を行う。その結果、今後の臨床応用へとつながる基礎的なデータが蓄積されると予想される。
また上述の(2)のステップ、すなわち肉腫細胞の非細胞自律的な薬剤耐性化獲得メカニズムについても、昨年度に構築された実験系を用いて解析を進める。各種肉腫細胞とBMSCを共培養し肉腫細胞の薬剤感受性が変化するかを検討する。 感受性が変化していた場合には、その変化が液性因子によって生じているのか、もしくは細胞間の直接接着により生じているのかについて解析し、原因分子Xの同定を行う。具体的には線維芽細胞増殖因子、Cadherin-11などの分子が同定される可能性がある。引き続き分子Xの阻害により、耐性化が克服されるかどうかについて確認する。上記いずれの実験系もすでに過去の研究により確立されており本ステップの目的の年度内達成の可能性は高い。
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次年度使用額が生じた理由 |
網羅的解析実験に用いた、薬剤ライブラリーが、投与の予定よりも安価に入手できたため、次年度への繰り越しを行った。
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次年度使用額の使用計画 |
上記に継続した細胞生物学的実験の消耗品および動物実験の動物購入費に使用予定とする。
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