骨格筋は、筋細胞のみならず、血管内皮細胞、脂肪前駆細胞、未分化な間葉系幹細胞など、さまざまな細胞で構成される。これらの細胞群は、互いに情報を交換しながら生理的機能を発揮すると考えられる。こうした情報伝達系の異常は、時に骨格筋組織の病的状態を引き起こす。Bone morphogenetic protein (BMP)のI型容体ALK2の活性型変異は、骨格筋組織の異所性骨化を起こす(進行性骨化性線維異形成症、FOP)。遺伝的に変異したALK2は、構成的に活性化されたものというより、II型受容体によってリン酸化を受けやすい構造となり、その結果、活性化されやすい可能性が示された。また、従来提唱されてきたシグナル抑制分子FKBP12との結合性低下は、II型受容体によって活性化を受けた結果である可能性も示唆された。FOPの変異ALK2を誘導性に発言するトランスジェニックマウスの骨格筋から細胞を分離・培養すると、筋分化能を示さない間葉系細胞画分が、BMPを含むTGFbファミリーのシグナルによって軟骨細胞へ分化することが判明しした。TGF-bファミリーシグナルを誘導性に遮断できるトランスジェニックマウスの骨格筋から筋細胞を分離・培養すると、TGF-bファミリーのシグナル遮断により著しく筋分化が亢進した。一方、炎症反応等によって惹起されるNF-kBシグナルは、BMPシグナルと同一細胞で活性化されると、BMPシグナルを抑制した。したがって、骨格筋組織の細胞群の中で、TGF-bファミリーシグナルは重要な情報伝達因子であり、円照寺などに一時的にシグナルが遮断されることで筋再生等が亢進する機序が示唆された。
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