研究課題
骨芽細胞は骨基質を産生する細胞である。加齢に伴い骨量が減少することが知られているが、Fra-1トランスジェニックマウスは、骨が増え続け、骨髄腔も骨梁で満たされる。平成26年度は、このマウスで骨形成を活性化するメカニズムは、「骨形成性の血管内皮細胞増生である」という作業仮説に基づき、以下の3つの実験を行った。【実験1】血管内皮細胞株(マウスC166 細胞)にFra-1を安定的に強制発現した。得られたC166内皮細胞を、骨芽細胞分化を促進する条件で培養し、アルカリフォスファターゼ活性染色、定量PCRによる骨芽細胞マーカー遺伝子発現の解析を行った。さらに、マイクロアレイを用いた比較により、Fra-1標的遺伝子の網羅的な解析を行った。アルカリフォスファターゼ活性染色の上昇が認められ、特定の遺伝子群の発現変動が認められた。【実験2】全身性コンディショナルFra-1トランスジェニックマウスを用いた実験: doxycyclineを与えてFra-1発現を誘導したマウスの骨髄腔における骨梁の増加の有無を解析した。生後21日目から5週間のFra-1の発現誘導で骨梁増加を認めた。誘導期間を5日まで短縮しても、有意な骨梁増加が観察された。Doxycyclineの投与により、骨を5日間で増やすマウスモデルができた。【実験3】細胞特異的Fra-1トランスジェニックマウスを用いた実験: 骨芽細胞特異的(Osterix-tTA)、および血管内皮細胞特異的(Cdh5-tTA)Fra-1トランスジェニックマウスを作製した。交配の段階からdoxycyclineを与えて、OFFの状態でマウスを得ることが可能になった。生後21日目から最低5週間のFra-1の発現誘導をかけて、これらのマウスの骨標本を回収した。コンディショナルFra-1トランスジェニックマウスは、Fra-1がどの細胞で発現することが、骨形成増加につながるかを解明する手段となる。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ予定どおりに研究が進んだ。骨芽細胞特異的(Osterix-tTA)、および血管内皮細胞特異的(Cdh5-tTA)Fra-1トランスジェニックマウスが得られた。今後、Fra-1の組織特的発現を免疫組織化学的手法で検証する必要があるが、平成26年度は表現形の比較解析を優先して進めた。
平成27年度は、これまでの解析で有望になった「骨形成性血管内皮増生」の仮説を検証することを目指し、以下の実験を行う。【実験1】一次海綿骨の「骨形成性血管」の形状の比較解析:高解像度のマイクロCT撮影(解像度1.07ミクロン)、および連続切片の再構築法を用いた「骨形成性血管」の形状の解析を行う。骨形成性血管の周囲に骨形成が進行すると、血管径は、成長板側の先端が太く、骨幹に向けて徐々に細くなることが予測される。この予測が、実際に成長板直下で起こっている現象と一致することを、形態学的に証明する。野生型と、一次海綿骨が延長しているFra-1トランスジェニックマウスや、副甲状腺ホルモン(PTH)の連続投与マウスで3次元構築を行い、血管形態を比較しながら、一次海綿骨における破骨細胞・骨芽細胞連関メカニズムを解析する。【実験2】コンディショナルトランスジェニックマウスを用いた実験:全身性、血管内皮細胞特異的、あるいは骨芽細胞特異的Fra-1トランスジェニックマウスにおいて、一次海綿骨の伸長の有無、経時変化を解析する。【実験3】Fra-1 ランスジェニックマウスの耳小骨(ツチ骨)の解析:耳小骨は、成長板を持たないため、長管骨のような一次海綿骨は存在しない。このような、成長しない骨におけるFra-1 発現の引き起こす形態学的異常を解析し、実験1と実験2の、長管骨を用いた実験結果と対比的に検討することで、Fra-1 ランスジェニックマウスに認められる骨量増加の、分子・形態学的基盤を明らかにする。
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