研究課題/領域番号 |
25293333
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
市川 智彦 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20241953)
|
研究分担者 |
関 直彦 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345013)
坂本 信一 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70422235)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 前立腺癌 / 癌抑制 / 転移抑制 / 去勢抵抗性 / マイクロRNA |
研究概要 |
前立腺癌臨床検体を用いたマイクロRNA発現プロファイルを独自に作成し、発現抑制が認められたものを指標にして、癌抑制型マイクロRNAの探索・解析を行なった。 まずmicroRNA-143/145およびmicroRNA-23b/27b/24-1クラスターを見出した。miR-143およびmiR-145を前立腺癌細胞株PC3とDU145に核酸導入したところ、癌細胞の浸潤・遊走を顕著に抑制し癌抑制型マイクロRNAであることが判明した。これらが共通して制御するGolgi membrane protein 1 (GOLM1)は前立腺癌細胞で高発現し癌遺伝子機能を有していることが示唆された。本成果は、Journal of Human Geneticsに受理された。microRNA-23b/27b/24-1についても癌細胞の浸潤・遊走を抑制することが判明した。miR-27bもGOLM1を直接制御しており、miR-27bの発現低下症例では前立腺癌再燃までの期間が有意に短く、これらの成果をBritish Journal of Cancerに投稿した。 転移抑制型マイクロRNAとして選択されたmiR-218は、LIM and SH3 protein (LASP1)を直接制御していた。LASP1は、臨床検体で高発現しており、癌細胞株でノックダウンすると浸潤・遊走を顕著に抑制し、前立腺癌の転移に関わる可能性が示唆された。本成果は、Cancer Scienceに投稿した。microRNA-29a/b/cについても転移抑制型マイクロRNAであること、標的分子のLaminin C2 (LAMC2)が癌細胞の浸潤・遊走に関わることを見出し、成果をInternational Journal of Cancerに投稿した。 その他、前立腺癌に関する臨床・基礎データを解析し、学会発表や論文発表などを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にも示したとおり、前立腺癌組織において発現が低下しているマイクロRNAの中から新たにmicroRNA-143/145 (miR-143/145)クラスターとmiR-23b/27b/24-1クラスターを同定した。これらの解析により、両者が共通して制御する新規癌遺伝子GOLM1 (Golgi membrane protein 1)を同定することができた。miR-143/145については既にJournal of Human Geneticsに受理されており、miR-23b/27b/24-1についてもBritish Journal of Cancerに投稿した。 前立腺癌組織において発現が低下しているマイクロRNAの中から、さらにmiR-218も同定し、その解析によりLASP1 (LIM and SH3 protein1)を制御することを明らかとし、これについてもCancer Scienceに投稿した。また、microRNA-29a/b/cについては、その標的分子のLaminin C2 (LAMC2)が癌細胞の浸潤・遊走に関わることを見出し、International Journal of Cancerに投稿した。 研究期間の1年目でこれらの成果を達成していることから、本研究課題はおおむね順調に進展していると自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
1.前立腺癌組織において発現が低下しているマイクロRNA(miRNA)の中から新たに癌抑制型miRNAを探索する。解析方法は、miRNAを前立腺癌細胞に導入し、細胞増殖能、遊走能、浸潤能の抑制とアポトーシス誘導を指標とした機能スクリーニングを施行して、癌の悪性形質を抑制する事で確認する。in vitro解析で明らかとなった癌抑制型miRNAについて、in vivoにおける解析を施行し、前立腺癌の治療候補となるmiRNAの選択を行う。 2.去勢抵抗性前立腺癌(CRPC) miRNA発現プロファイルを作成し、これまで我々が保有する前立腺癌miRNAプロファイルと比較を行い、CRPC特異的な発現を示すmiRNAを探索する。これらを順次機能解析し、癌遺伝子型・癌抑制型miRNAに分類する。 以上の解析の中で、検証の進んだmiRNAについてさらに次の解析を進める。 前立腺癌・非前立腺癌およびCRPCなどの機能解析で明らかとなった癌遺伝子型・癌抑制型miRNAについて、miRNAを基点とした機能性RNA分子ネットワークの解析を行う。この解析では、候補miRNA が制御する遺伝子群をTargetScan等の公共データベースから抽出し、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)上にマップする。その中からmiRNAが制御するシグナル伝達経路を抽出する。これらのシグナル伝達経路の探索から前立腺癌およびCRPCにおいて活性化しているシグナル伝達機構を明らかとする。 さらに、このシグナル伝達経路において、既存の治療薬でその経路を遮断することが可能なものがあるか検証する。遮断することが可能であり、かつ前立腺癌やCRPCで使用されていない既存の治療薬があれば、前立腺癌XenograftモデルマウスやCRPCモデルマウスを用いて抗腫瘍効果について検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の臨床検体からマイクロRNA(miRNA)発現プロファイルを作成し、これまで我々が保有する前立腺癌miRNAプロファイルと比較を行うために、数検体分のCRPC組織から新規にRNAを抽出した。抽出したRNAからmiRNA発現プロファイルの作成を計画していたが、これまでに得られている前立腺癌のmiRNAプロファイルの解析が順調に進捗し、論文投稿することができた。そのため、比較的高額の外注委託費を必要とするmiRNA発現プロファイルの作成を次年度に実施することとした。このため、次年度(平成26年度)使用額が生じた。 次年度(平成26年度)において、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)のmiRNA発現プロファイルを作成し、これまで我々が保有する前立腺癌miRNAプロファイルと比較を行い、CRPC特異的な発現を示すマイクロRNAを探索する。これらを順次機能解析し、癌遺伝子型・癌抑制型miRNAに分類する。また、平成25年度に引き続き前立腺癌組織において発現が低下しているmiRNAの中から新たに癌抑制型miRNAを探索する。 その後、「12.今後の研究の推進方策等」で示したように研究を遂行することにより、平成25年度に生じた次年度使用額は平成26年度中に使用する見込みである。
|