研究課題/領域番号 |
25293335
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 孝彰 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (70314010)
|
研究分担者 |
羽根田 正隆 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座講師 (50436995)
岩崎 研太 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座講師 (10508881)
三輪 祐子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90572941)
丸山 彰一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10362253)
大西 彰 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (30414890)
小川 晴子 帯広畜産大学, 動物・食品検査診断センター, 教授 (10400079)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 移植・再生医療 / 腎移植 / 慢性抗体関連型拒絶反応 / 免疫学 / マイクロアレイ / シグナル伝達 / クローンブタ |
研究実績の概要 |
3つのプロジェクト(P-1.2.3)に分けて研究の進捗状況を記す。 P-1:HLA抗体産生制御のための抗体産生メカニズム解明と予防、早期診断のため末梢血PBMCに追加して、血清中のmiRNAマイクロアレイ解析を実施し、候補となるマーカーをピックアップした。これらを別の集団でRT-PCRを用いて検証した。PBMCでは、ドナー特異的HLA抗体産生例でmiR-142-5p発現が有意に低く、subclinical CAMRでは、miR-182, miR-486-5pの発現が有意に高いこと、さらにこれらのmiRNAの関与する PTEN mRNAの発現が減少していることを確認した。 抗ドナーHLA抗体のうちDQだけに反応する抗体の多くはCAMRを引き起こさない。補体結合能とCAMRとの関係が見出された。末梢血B細胞(とくにNaive)からlong-lived plasma cellへ分化誘導培養系にAPRIL添加が重要である。 P-2:グラフトaccommodation獲得のためのシグナル伝達ネットワークの解明を試みている。内皮細胞の解析において、抗体接着、mTOR阻害剤など薬剤によるHLAとくにClass II抗原の発現に及ぼす影響を調べた。糖鎖に対する抗体である血液型A/B抗体は、HLA抗体と異なり、接着後ERK抑制によりClass II発現抑制が観察され、Accommodationメカニズムの1つと考えられた。P-3:抗体関連型拒絶反応ブタモデルの作成を進めている。抗体関連型拒絶反応を誘発するSLAの組み合わせで、クローンブタを作出中であるが、凍結保存されたFibroblastの状態が悪く難航しているため、ブタ抗体産生モデルに必要な免疫抑制剤(Calcineurin 阻害剤)のPK解析を実施した。また、脂肪由来間葉系幹細胞(Ad-MSC)による免疫調節作用は個体差が大きく、免疫抑制および刺激と相反する効果を及ぼすメカニズムの解明が必要となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎移植後の長期生着の妨げとなっている慢性抗体関連型拒絶反応は、移植後に産生される抗ドナーHLA抗体がグラフトに接着して補体、凝固、炎症反応、内皮細胞の活性化により引き起こされる。有効な早期診断、治療法の開発が本研究の目的である。上記目的を達成するため、本研究では効率的な研究の推進を図り、下記3つのプロジェクト(P-1:レシピエント血液を用いたOMICS解析によるBiomarker探索、メモリーB細胞を用いたin vitro分化誘導システムの開発、P-2:グラフトの向凝固活性の制御とAccommodationの誘導、P-3:クローンブタを用いた抗体関連型拒絶反応モデルの作成と応用)を進めている。 P-1, P-2, P-3ともに、研究実績の概要に記載したように、ほぼ順調に成果が得られており、計画は予定通り進行していると考える。 最終年度に向けて、課題が明確になり、効率的な研究が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
得られた成果を基盤にして、最終年度であるH27年度は、(P-1)末梢血PBMC,血清、移植腎グラフトのmiRNA解析の結果、候補となる分子標的を決定しRT-PCRによるmRNA を定量解析する。各種ターゲットmoleculeにおける各患者の末梢血mRNAを定量解析し、臨床的にAccuracy, Predictabilityを評価する。同一患者の経時的変化も解析する。また、In vitro B細胞培養実験でHLA抗体解析とともに、誘導されたメモリーB細胞に発現するmRNAを同定し、末梢血由来B細胞のmRNA, miRNAとの比較解析を行う。免疫抑制療法の最小化(最適化)の指標についても検討し、抗体産生早期診断、Accommodation誘導、慢性拒絶反応診断(腎生検)、治療に関するProspective studyを計画したい。(P-2)凝固を制御するトロンボモジュリン、今回新しく同定された分子に注目し、Accommodationの診断マーカーおよび誘導因子を培養細内皮細胞で解析する。腎生検組織および末梢血にてWestern blotting, mRNA解析により、ターゲットマーカーの動態を調べる。とくに、HLAクラス2(DR, DQ)の組織発現の変化については従来の報告がほとんどないので、詳細に解析し、慢性拒絶反応とのと関わりを調べる。さらにABO不適合移植での内皮細胞の発現レベルを解析し、Accommodation誘導との関連を調査する。(P-3)本研究で得られた結果を基に、抗体関連型拒絶反応の効率的かつ総合的な制御方法を開発する。遺伝子導入による作出したヒト型AB発現ブタモデルの可能性を検討する。糖鎖抗原(抗A/B)とタンパク抗原(組織適合性抗原)による抗体の免疫反応、移植後の拒絶反応の違いを解析する。得られた結果を取りまとめて、成果の発表を行うと同時に、海外での関連研究の情報を入手して、今後の研究の方向性を決定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況は良好である。研究に利用する消耗品の一部に予備があったため、年度内に購入する必要がなくなったそのため、433380円を繰り越すことになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
最終年度である平成27年度は、効率的に研究をすすめるべく、予定通り物品費と、成果発表、情報収集のための国際学会出張費、論文作成、投稿費用にあてる。
|