研究課題/領域番号 |
25293338
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
榎本 隆之 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90283754)
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研究分担者 |
吉田 邦彦 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (20648589)
関根 正幸 新潟大学, 医歯学系, 講師 (70345502)
井ノ上 逸朗 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 教授 (00192500)
仲 哲治 独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, 研究部長 (30303936)
吉野 潔 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90362730)
上田 豊 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10346215)
安達 聡介 新潟大学, 医歯学系, 助教 (50613147)
芹川 武大 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30361918)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トランスレーショナルリサーチ / マイクロアレイ / ゲノム / 癌 / プロテオーム |
研究概要 |
子宮体部および卵巣原発の漿液性腺癌と類内膜腺癌の各9症例、計36症例の凍結検体を用い、蛋白質およびDNA・RNAを抽出した。iTRAQによる網羅的蛋白質発現解析を行い、それら検体に共通して発現している826種の蛋白質を同定した。公開されているマイクロアレイデータを用いて検出されたタンパクのRNAレベルの発現を検証した。また、検出された蛋白質について蛋白質発現値による階層的クラスター解析を施行し、unsupervisedに臨床検体のクラスタリングを行ったところ、原発臓器(子宮vs. 卵巣)より組織型(漿液性腺癌 vs. 類内膜腺癌)とより有意に相関していることが証明された(p=0.0003)。 ネットワーク解析 漿液性腺癌で有意に高発現しているタンパクは118種類あり、これにProtein Ontology解析を行うと、15種の活性化しているbiological processが同定された。 婦人科悪性腫瘍組織および腹水検体よりがん細胞を抽出し,浮遊培養系を用いて血清非添加培地中で卵巣高悪性度漿液性腺がんおよび子宮体がんよりスフェロイド細胞の安定培養に成功した。安定培養した細胞のin vivo造腫瘍能確認に免疫不全マウス皮下への細胞移植を,in vitro分化誘導法に血清添加培地での接着培養を施行した。スフェロイド細胞はin vivoにおいて患者検体と類似の腫瘍を形成した。卵巣がんスフェロイド細胞は幹細胞因子(Nanog・Sox2・ALDH1A1)を発現しており,分化誘導により発現の低下を認めた。またこれら幹細胞因子の発現抑制により細胞の増殖抑制を認めた。分化細胞を浮遊培地でのin vitro脱分化誘導を行うとスフェロイドの再形成を認め,幹細胞因子の再上昇を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画全体としては順調に進んでいる。研究結果の状況により、当初の計画の進め方の変更を行った。すなわち、当初平成25年度に行う予定であったExomeシークエンスおよびSNPアレイは実施せず、一方、当初は平成26年度に実施予定であった腫瘍不均一性及び腫瘍間の類似性/相違性の検証およびネットワーク解析を前倒しして平成25年度に実施した。平成26年度にはこれをさらに発展させていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
<平成26年度> 1) 候補標的分子に対する機能解析 2) high-grade serous carcinomaの起源解析 平成25年度の研究にて明らかになった、high-grade serous carcinomaで有意に高発現している118種類の蛋白質において、15種の活性化しているbiological processについて解析を進める。これらのbiological process を詳細に検討し、high-grade serous carcinomaを特徴づける分子群を同定したい。それらはhigh-grade serous carcinomaの診断・治療標的となりうるものである。さらにそれら分子の発現やその役割を、high-grade serous carcinomaの前駆病変の可能性が示唆されている卵管や子宮内膜のintraepithelial carcinomaで解析し、臓器を超えたhigh-grade serous carcinomaの発生メカニズムの解明につなげる。 卵巣がん・子宮体がん臨床検体由来のスフェロイド細胞培養に成功した。がん幹細胞性質を持つ卵巣がんスフェロイド細胞の生存・増殖に幹細胞因子の関与が示され,またがん幹細胞の分化可塑性の存在が示唆された。スフェロイド細胞を用いた更なる生化学的解析を進めて行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の成果として36例の凍結検体よりタンパク・RNA・DNAの抽出を行い,アレイ解析・クラスタリング解析を施行した。計画予定であったシークエンス及びSNPアレイ解析を平成26年度に先送りにしたために,研究費の余剰分が生じた。 平成26年度に計画している候補標的分子の機能解析ならびに昨年度未施行であったシークエンス解析用の各種試薬等に使用する。
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