研究課題
卵巣、卵管、子宮、腹膜に発生する漿液性腺癌も、組織学的にあるいは生物学的に多くの類似点を持ち、腹膜播種を伴った進行がんとして発見されることが多く、予後不良な疾患である。漿液性腺癌の起源については、卵巣原発、あるいは腹膜原発の多くと子宮体部原発の一部は卵管采の上皮由来であるという説がある一方腹膜原発の中には多中心性に発生するものがあるという説がある。また子宮体部原発のものは子宮内膜の上皮内病変から発生するという説もあり未だ明らかでない。本研究では卵巣漿液性腺癌、および子宮体部漿液性腺癌における分子生物学的特徴を明らかにし、卵巣あるいは子宮体部に発生する類内膜腺癌と比較することによって、ミューラー管由来漿液性腺癌の子生物学的共通性/相違性を同定することを目的とした。凍結保存した臨床検体からレーザーマイクロダイセクション法にて腫瘍部分のみを回収、isobaric Tags for Relative and Absolute Quantitation法による網羅的タンパク解析を行い、828種のタンパクを同定、発現変動のSD<0.3のタンパク356種を階層クラスター解析(unsupervised hierarchical cluster analysis)を行ったところ低分化型漿液性腺癌は発生部位にかかわらず、臓器を超えた類似性を示すことがわかった。低分化型漿液性腺癌で有意に発現が高い45種のタンパクを用いてオントロジー解析を行い、insilin-like growth factor 2 mRNA-binding protein (IMP2)と DNA replication licensing factor MCM2の2種のタンパクを同定した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度から26年度にかけて、卵巣由来のHGSC7例、子宮体部由来のHGSC7例、およびコントロールとして、卵巣由来の高分化型類内膜癌9例、子宮体部由来の高分化型類内膜腺癌9例の計32例の新鮮凍 結検体を用いた。レーザーマイクロダイセクションで腫瘍のみを回収し、iTRAQ法を用いて卵巣および子宮体部 のHGSCおとび高分化型類内膜腺癌の網羅的蛋白解析をおこなった。6シリーズのiTRAQ法にて828種のタンパクを 同定、発現変動がSD 0.3未満の356種の蛋白に対し階層的クラスター解析を行い、その生化学的類似性を統計学 的に評価したところ、卵巣由来HGSCは卵巣由来高分化型類内膜腺癌より子宮体部由来HGSCと生化学的に類似して いることを証明し(p=0.0007)。またHGSCで有意に高発現な45種の蛋白を用いてオントロジー解析を行い、2 つの有意なカテゴリー(negative regulation of protein metabolic process, DNA replication initiation) を同定した(FDR<0.3).前者ではIGFBP2,後者ではMCM2が最も高発現であった。
平成27年度は①卵巣由来および子宮体部由来のHGSCおよび高分化型類内膜腺癌におけるIGFBP2、MCM2の発現をreal time PCRおよび免疫染色にて検索し、発現が組織型と相関するか検証する。②HGSC由来細胞株にを用いてsiRNAを用いてこれらの蛋白の発現を制御した際のin vitroでの細胞増殖変化、in vivoでの腫瘍サイズの変化をみる。③HGSC低発現細胞株にこれらの遺伝子を導入した際のin vitroでの細胞増殖変化、in vivoでの腫瘍サイズの変化を調べIGFBP2、MCM2のHGSCにおける役割を明らかにする。④卵巣および子宮体部由来のHGSCの臨床検体からcancer stem cellが多く含まれているsphenoidを培養分離し、その細胞におけるIGFBP2, MDM2の役割を同定する。
平成26年度の成果として36例の凍結検体よりタンパク・RNA・DNAの抽出を行い,アレイ解析・クラスタリング解析を施行した。計画予定であったシークエンス及びSNPアレイ解析を平成27年度に先送りにしたために,研究費の余剰分が生じた。
平成27年度に計画している候補標的分子の機能解析を行う。また標的候補遺伝子のcancer stem cell での役割を同定するためにsphenoidを培養分離しそこからcancer stem cellを確立、機能解析を行う。
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