研究課題/領域番号 |
25293339
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
宮本 強 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (70418721)
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研究分担者 |
山田 靖 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (60646652)
小原 久典 信州大学, 医学部, 助教 (30598818)
塩沢 丹里 信州大学, 医学部, 教授 (20235493)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | lipocalin2 / 子宮内膜癌 / 造腫瘍能 / 抗癌剤耐性 / 癌幹細胞マーカー |
研究概要 |
まず、LCN2高発現子宮内膜癌細胞株HHUA(HHUA-C)を用いて、4種類の長さのLCN2プロモーター配列のルシフェラーゼレポーターアッセイを行ったところ、NF-kB結合配列の有るものでは転写活性が高かったが、NF-kB阻害薬添加により、転写活性は殆ど変化しなかった。このことからHHUA細胞においては、LCN2発現はNF-kB非依存性と考えられた。 次にLCN2の癌幹細胞性への影響について、癌幹細胞マーカーとして知られるCD133, CD44 variant isoform 8-10 (CD44v)の発現に注目した。これらのmRNA発現はLCN2受容体SLC22A17発現と相関を認め、HHUA-Cに比較し、LCN2発現抑制HHUA細胞(HHUA-sh)で発現が低下するが、組み換えLCN2 (rLCN2)添加で48時間後には増加し、さらにrLCN2と抗癌剤シスプラチン添加48時間後では5倍以上発現が増強した。これらの分子について、子宮内膜癌の癌幹細胞マーカーとしての意義は現時点で明確ではないが、酸化ストレス耐性や抗癌剤耐性に関与することが知られており、LCN2による抗癌剤耐性や酸化ストレス耐性増強作用に影響している可能性が考えられた。 次に、ヌードマウス腰背部筋膜下にHHUA細胞を移植すると形成された腫瘍は腹壁に浸潤して腹腔内に達し、4週後には腹膜播種を形成する。HHUA-Cでは80%(8/10)のマウスで腹膜播種形成を認め、平均5か所以上の播種を形成したが、HHUA-shでは形成された腹壁腫瘍は小さく、腹膜播種形成したものは20%(2/10)のみであり、播種数も1~2個と少数であった。この播種病変でのLCN2 mRNA発現をRT-PCRで確認すると、HHUA-shから形成された腹膜播種腫瘍は全てLCN2発現がHHUA-Cと同レベルまで回復していた。このことは、腫瘍の浸潤・腹膜播種形成において、LCN2が重要な役割を持つことを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LCN2の子宮内膜癌における機能が、徐々に明らかになってきており、分子標的として有望であると考えられる。 当初の予定にあった、マイクロアレイ解析は、既に外部委託の準備が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初の研究計画の通りに遂行する。本年度は特にLCN2やSLC22A17の下流分子、強調して作用する分子の探索を進める。そのためのマイクロアレイ解析は、既に外部委託の準備が進行している。また免疫沈降法とTOF-MAS法併用によりLCN2やSLC22A17に結合する新規分子を同定していく。この免疫沈降に適した抗体を現在選定中である。LCN2と癌幹細胞マーカーCD133やCD44vとの相互作用は免疫沈降法等も用いて検討する。また、マイクロアレイデータからLCN2機能抑制を示すパラメーターを見出す。
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