研究実績の概要 |
本課題の目的は卵巣癌細胞によって活性化された癌関連中皮細胞(cancer-associated mesothelial cell: CAM)がいかに腫瘍細胞の腹膜親展に加担しているかを、サイトカイン/ケモカイン、microRNA、および薬剤耐性化などの側面から明らかにすることである。また、本課題は以下の3つのパートから成り立つ。(1)卵巣癌における包括的細胞骨格制御システムを解析し、再発卵巣癌のもつ癌-腹膜中皮相互EMTモデルの関連性を追求する実験系を構築する研究、(2)腹腔内癌-腹膜中皮の細胞コミュニケーションによる卵巣癌腹腔内進展機序の解明、(3)再発卵巣癌におけるEMT誘導転写因子ZEB1の機能解析とTGF-βシグナル経活性化とEMT誘導転移能亢進のメカニズム。(1)(2)に関する具体的な本年度の業績を以下に示す{(3)は昨年度報告済み}。(1)Human mesothelial cellsを用いた中皮間隙intercalation assayおいて、Fascin / Myosin Xのダブルノックダウンがintercalationを有意に阻害し、中皮間隙への腫瘍のintercalationに重要な一役担うことが示された。また、Cortactin, CSPG4, およびHS1のノックダウンを用いた腫瘍運動の抑制系実験の結果、中皮細胞間隙へのintercalationは、細胞運動能とは非依存的に、Fascin, Myosin Xによる独立した制御系を介することが判明した。 (2)中皮細胞の培養上清を用いヒト臍帯静脈内皮細胞human umbilical vein endothelial cell(HUVEC)の遊走,血管形成の変化をそれぞれmigration assay,tube formation assayにて評価したところ、HUVECの遊走は,CAMの培養上清を用いた場合において有意に亢進していた。同様にHUVECのチューブ形成も亢進を認めた。腹膜中皮細胞は,癌細胞の作用によって線維芽細胞様に形態変化しVEGF産生が亢進した.またCAMは,血管内皮細胞に作用し遊走や血管新生を促進することでさらなる癌の進展に寄与する可能性が示唆された。
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