研究課題/領域番号 |
25293343
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
杉野 法広 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10263782)
|
研究分担者 |
山縣 芳明 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (30363120)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 子宮内膜 / 脱落膜化 / エピジェネティクス / ヒストン修飾 / 転写調節 |
研究実績の概要 |
本研究では、脱落膜化によりゲノム全体にわたりどのようなヒストン修飾変化が誘導されるのかを次世代シーケンサーを用いて解析し、またヒストン修飾変化を伴い発現が変化する遺伝子は脱落膜化に関しどのような生理学的役割を果たしているのかを検討したのでその研究成果を報告する。 IRBの承認と患者の同意を得て分離した子宮内膜間質細胞(ESC)を、Estrogen+Proegsteroneで14日間培養することで脱落膜化を誘導した後に、ヒストン修飾(H3K27ac、H3K4me1、H3K4me3、H3K27me3)の変化をChIP sequence法で、mRNA発現変化をRNAsequnec法で解析した。脱落膜化によりゲノム全体にわたり多くの領域でヒストン修飾が変化した。その変化は転写活性化に作用するH3K27acまたはH3K4me3修飾の上昇が主であり、H3K27ac、H3K4me3修飾の低下や、転写抑制に働くH3K27me3修飾の変化は少なかった。H3K27acまたはH3K4me3修飾の上昇とともに発現が増加する遺伝子群の特徴をpathway解析で調べたところ、インスリン経路に関連する遺伝子が多く含まれていた。インスリン経路関連遺伝子 (IRS1, IRS2, INSR, FOXO1, MAPK10)の役割としてグルコースの取り込みを調べた。脱落膜化の誘導により、グルコースの取り込み能が上昇したが、低グルコース培養下では、脱落膜化によるIGFBP-1とPRL 発現(脱落膜化マーカー遺伝子)の増加が抑制された。 ゲノムワイドな解析により、ESCの脱落膜化により多くの遺伝子がヒストン修飾変化を伴い発現が変化することが明らかとなった。特に、脱落膜化によりヒストン修飾を介したインスリン経路遺伝子群の活性化が起きていた。これらはグルコースの取り込みを促進し、脱落膜化を誘導することに関与しており、脱落膜化における糖代謝の重要性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの研究目的である、脱落膜化に伴うゲノムワイドなヒストン修飾酵素とmRNA発現の変化を明らかにした。さらに、両者の変化を認めた遺伝子群を抽出し、これらの遺伝子のヒストン修飾の時間的変化を明らかにしたこと、さらにこれら遺伝子の生理学的役割を明らかにした。したがって、これまでの計画に沿って概ね研究が進行していると考える。また、脱落膜化に関与する重要な転写因子であるCEBPbeta のChIP sequence も行っており、来年度の研究目的である「子宮内膜間質細胞の脱落膜化に伴うヒストン修飾、遺伝子発現、転写因子 CEBPbetaの結合による転写活性調節等による二次解析や統合解析」に繋がる研究成績が得られたものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は、これまでに得られた膨大なデータを種々の解析方法を用いて解析する二次解析と統合解析を行うことが主体となる。したがって、バイオインフォマティクスを専門とする研究分担者や連携研究者だけでなく、当該分野の他の研究者との連携を密にするほか、研究室カンファレンスでの参考意見も積極的に取り入れ、研究がより効率的に進むようにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度にゲノムワイドのクロマチン構造解析を行う予定であったが、対象となる子宮内膜組織の検体が不足したため、ゲノムワイドのクロマチン構造解析に用いる消耗品の購入を見送ったため、未使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
この未使用額については、平成27年度の研究費と併せて、ゲノムワイドのクロマチン構造解析に用いる消耗品の購入に充てる。
|