研究課題/領域番号 |
25293344
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
片渕 秀隆 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (90224451)
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研究分担者 |
高石 清美 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (00601303)
本原 剛志 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (10457591)
坂口 勲 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (40448527)
田代 浩徳 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (70304996)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 上皮性卵巣癌 / 癌幹細胞 / 卵巣表層上皮 / 卵巣癌治療 / 卵巣癌モデル |
研究実績の概要 |
われわれの研究グループでは、卵巣癌幹細胞と癌幹細胞ニッチを標的とした新規治療戦略の開発を目指し解析をすすめている。卵巣癌の治療においてしばしば経験する抗癌剤治療抵抗性や転移など、既存の抗癌剤化学療法には限界があるため、卵巣癌患者の予後のさらなる改善に向けて、分子生物学的根拠に基づいた新たな治療戦略の開発が重要であることは論を俟たない。これまでのわれわれの基礎的研究および臨床的解析から、マウスならびにヒト卵巣癌における細胞表面マーカーを用いた卵巣癌幹細胞の同定に成功し、卵巣癌幹細胞モデルを樹立した。現在、ヒト卵管采の上皮細胞を用いたヒト細胞由来の癌幹細胞発癌モデルの樹立を目指し解析を行っている。一方、骨盤腹膜の卵巣癌の播種病巣に存在する腫瘍随伴マクロファージが癌幹細胞ニッチとして機能する可能性が示されている。臨床検体を用いた卵巣癌の播種病巣の免疫組織化学染色を行った結果、CD44陽性の卵巣癌幹細胞が腫瘍随伴マクロファージの集積を誘導し、微小環境ニッチの形成に関与している可能性が示された。さらに、腫瘍細胞とマクロファージとの共培養による実験も進行しており、癌幹細胞と癌幹細胞ニッチとの細胞間相互作用についての新たな知見が得られる可能性がある。また、卵巣癌におけるCD44 陽性細胞が、G-SSF、GM-CSF、IL-6などのサイトカインを産生し、マクロファージの分化を誘導することで癌幹細胞ニッチを形成することを明らかにしており、今後のさらなる詳細な解析が重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの基礎的研究ならびに臨床的解析から、卵巣癌における卵巣癌幹細胞と癌幹細胞ニッチとして機能する腫瘍随伴マクロファージ(TAM)との関連性が明らかになってきた。腫瘍組織が増大するに伴って、癌細胞が産生するケモカインやサイトカインによって、単球/マクロファージの腫瘍内浸潤が誘導され、TAMへの分化が促進されることが知られている。腫瘍組織内で活性化されたTAMからは様々な血管新生因子、免疫抑制因子ならびに各種成長因子が産生されて、癌細胞と間質成分が一体となった腫瘍微小環境が形成される。われわれのこれまでの検討では、CD44 陽性の卵巣癌幹細胞が播種病巣形成に関与していることを明らかにした。さらに卵巣癌におけるCD44 陽性細胞が、各種サイトカインを産生し、TAMを分化誘導することで癌幹細胞ニッチを形成することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、卵巣癌における抗癌剤治療抵抗性や転移に関わる癌幹細胞に着目したものである。卵巣癌幹細胞だけでなく、癌幹細胞ニッチとの相互作用を制御すことで、腫瘍全体を標的として癌を根絶するといった、これまでにない治療法の開発を目的としている。今後もヒト卵巣における組織幹細胞の同定をすすめると同時に、それらの細胞を用いた発癌誘導実験を計画している。また、これまでのわれわれの解析で明らかになった卵巣癌幹細胞の細胞集団を標的とした分子標的薬の治療実験を行う。さらに、腫瘍随伴マクロファージが癌幹細胞ニッチとして機能している知見が得られたことから、卵巣癌幹細胞と癌幹細胞ニッチとの相互作用に関する詳細な解析を続ける。
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