研究課題/領域番号 |
25293345
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
浜谷 敏生 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60265882)
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研究分担者 |
阿久津 英憲 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (50347225)
秦 健一郎 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (60360335)
津村 秀樹 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (20180052)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 着床前期胚 / 発現プロファイリング / ZGA / 新規遺伝子 / SCAN / 染色体ギャップ |
研究概要 |
本研究では、着床前期胚発生における胚性ゲノムの活性化(ZGA)や分化全能性の獲得などに係る分子機構の解明を目指した。in silico解析により着床前期で特異的に発現していると考えられた新規遺伝子Zfpiに着目し、初期胚発生及びES細胞における役割を明らかにすることを目的とした。Zfpiの全長cDNA解析の結果から、ZfpiはSCNA-zinc fingerタンパクをコードすると考えられ、抗ペプチド抗体を作成した。RT-PCRおよび免疫組織化学染色により着床前期各ステージ胚及びマウス成獣多組織において発現解析を行った。RT-PCRでは2細胞期から胚盤胞期の着床前期胚およびES細胞にのみ発現を認めた。免疫組織化学染色においても着床前期胚で発現を認め、特に8細胞期及びES細胞では核への局在が確認された。機能解析のため、本遺伝子の第2および第3エクソンを欠失させたノックアウト(KO)マウスを作成した。KOマウスは成獣まで発生し、生殖能も維持されていた。着床前期胚発生や産仔数にも異常は認められず、KOマウスの胚盤胞からES細胞(KO ES)を樹立することも可能で、KO ES細胞は未分化性、多分化能性にも異常を認めなかった。しかし、核型解析を行ったところ、KO ES細胞のみならず、KOマウス(脾リンパ球)でも高頻度にchromosomal gapが認められることが明らかとなった。 KO ES細胞と野生型ES細胞の遺伝子発現を網羅的に比較検討したところ、有意に発現レベルの異なる遺伝子が抽出された(887 transcripts)。以上より、KOマウスの表現型に異常は認められなかったが、体細胞の染色体に構造異常(凝縮不全の疑い)をもつことから、Zfpiはゲノムや染色体の安定性に寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ノックアウトマウスの表現型が安定しない。網羅的ゲノムDNAメチル化解析を進めるには、サンプルが稀少であるため、解析結果が安定しない。染色体不安定性の原因解明が困難。
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今後の研究の推進方策 |
いずれの着床前期胚特異的遺伝子についても、ノックアウトマウスの表現型と遺伝子機能を十分結びつけることができていないため、さらに遺伝子機能の解析を進める。 Kzpiについては、ノックアウトマウスの生殖細胞と初期胚におけるDMRのメチル化レベルの解析、ノックアウトES細胞におけるKZPIと結合するDNA配列やタンパクを明らかにする。Zfpiについては、染色体不安定性を惹起する分子機構の解明を目指す。まずは、ZfpiノックアウトES細胞について紫外線照射後培養やマイトマイシン添加培養を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下の理由により、研究を予定通りに進めることができていないため。 ノックアウトマウスの表現型が安定しない。網羅的ゲノムDNAメチル化解析を進めるには、サンプルが稀少であるため、解析結果が安定しない。染色体不安定性の原因解明が困難。 ノックアウトマウスの世代あたりの個体数も増やしながら、継代を進める予定であるため、未使用額と次年度研究費を合わせて動物購入代や解析費等に支出する。
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