メニエール病の病理組織学特徴は内リンパ水腫である。この内リンパ水腫形成に抗利尿ホルモン(VP)と水チャネル(アクアポリン)の関与に関して臨床および基礎研究成果を報告してきた。しかしながら、腎臓で認められるようなVPによるアクアポリン2の制御に関する直接的な報告は未だない。また、内リンパ水腫を確認するには組織学的手法によるが、通常の方法では組織作成時にアーチファクトが問題となる。このため精度の高い内リンパ水腫の計測には適さない。 これまで研究で、モルモットにおける蝸牛アクアポリン2(AQP2)の発現を蛍光抗体法を用いて観察したが、種々の改良を試みてもモルモット血管条では自家蛍光を抑えることができなかった。そこでマウスを用いて血管条AQP2の発現を蛍光抗体法を用いて観察し、AQP2のタンパクが血管条に存在することを証明した。今後の内耳におけるAQP2研究の基礎となる結果を得ることができた。 アーチファクトの無い精度の高い内リンパ水腫の評価に関しては、摘出標本をEDTAで脱灰の後、OCTを用いて観察することで可能であることを証明した。さらに進んで、OCTによって生体モルモットで内リンパ水腫形成過程を観察することにも成功した。そこで、生体内リンパ嚢閉塞モルモットを用いて、内リンパ水腫を軽減する薬剤であるイソソルビドによって内リンパ水腫が軽減される過程を観察することにも成功した。今後、このOCTによる生体蝸牛の観察法を用いて、種々の条件を付加し非侵襲的に蝸牛内部構造の変化を観察することが可能になった。内耳研究に新たな観察方法を加えることができた研究成果である。
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