研究課題/領域番号 |
25293354
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
不二門 尚 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50243233)
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研究分担者 |
三好 智満 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70314309)
松下 賢治 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40437405)
森本 壮 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00530198)
神田 寛行 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50570248)
辻川 元一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70419472)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経保護 / 電気刺激 / 軸索再生 / 視覚回復 / 人工網膜 |
研究概要 |
ラマン分光による神経細胞死の評価:ラマン分光を用いてCytochrome Cの細胞内の分布(ミトコンドリアを反映していると考えられる)をRGC5に対して、1細胞単位で画像として表示すると同時にSpectrumの解析を行った。Glutamate負荷後時間と共に、Cytochrome Cのピークを含む複数のピークの低下がみられた。これは、ラマンspectrumの変化が、細胞死に至る過程での早期の細胞内の変化をとらえられる可能性があることを示唆する。今後、還元型Cytochrome Cの細胞内分布の時間経過と対比して検討する予定である。 不死化神経細胞に対する電気刺激の効果:コンフルエントにした培養RGC5細胞にglutamate(Glu;400 mM)を付加し45分後にWash outする方法で、神経細胞死のモデルを作成し、電気刺激の効果を検討した。電気刺激なしでは30分後75%程度の細胞が細胞死を起こすが、電気刺激(ES;10mA、20Hz 30分)を付加しても細胞死を起こす比率に有意差は見られなかった。ここで用いた電気刺激のシステムは、Wellの大きさが小さく、有効な電気刺激が行われなかった可能性があるため、大きなWellを使用し、さらなる検討を加える予定である。 視神経症に対する経角膜電気刺激の効果:外傷性視神経症42例に対する経角膜電気刺激の効果を臨床例で検討した。電気刺激後44%の症例で、2段階以上の視力改善が得られ、50%の症例で20%以上の視野の拡大が得られた。今後ランダム化試験で治療効果のエビデンスを出していく予定である。 人工網膜による視機能改善の評価:人工網膜第2号機による臨床研究を開始し、Localization testにおいて、スイッチをONした場合にOFF時よりも到達運動の正確さが向上することが示された。今後は視覚リハビリテーションを行った後の効果を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究は、電気刺激による網膜神経保護・賦活”に関するその詳細なメカニズムの解明、最適な刺激条件の決定などの基礎的研究と、経角膜電気刺激(TES)の効果に関する臨床的研究、人工網膜による電気刺激の視機能改善に関する臨床研究を目的としている。基礎研究では、ラマンスペクトラムを使うと、神経細胞死の初期の細胞内変化が、継時的に観測できる可能性が示されたことが大きな成果である。電気刺激による神経細胞死の予防に関する実験は、条件を変えても培養神経細胞の生存率に有意差を見出すことはできなかった。これは、グリア細胞が共存していない環境では、電気刺激の効果は限局的なものであることを示唆するもので、次年度以降検討を要する。外傷性視神経症に対するTESの効果に関しては、多数例の症例で検討が進み、視野の改善に効果があることが示されたことが、重要な成果である。人工網膜に関しては、第2世代のものが、到達運動に有効であることを、定量的に示すことができたことは、第1歩の前進である。
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今後の研究の推進方策 |
電気刺激による網膜神経保護・賦活”に関するその詳細なメカニズムの解明に関しては、ラマンスペクトラムを用いて、培養神経細胞に対して電気刺激を与えた条件で検討する予定である。神経細胞死に到る培養神経細胞に対する、電気刺激による効果の研究は、培養神経細胞と培養グリア細胞との共培養系を用いて、さらに検討を進める予定である。TESの神経症に対する効果の研究は、刺激電流値をランダムに変えた場合の効果の違いを検討することにより、よりエビデンスレベルの高いものとする予定である。人工網膜による視機能改善の評価は、複数例の症例で検討するとともに、長期の視覚リハビリテーションの効果も判定する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
電気刺激で変化する遺伝子の検討に関して、電気刺激で培養細胞で神経細胞死が防げる条件が見いだせなかったので、分子遺伝学的検討は十分に行えなかった。結果として繰越金が生じた。 電気刺激で変化する遺伝子の検討に関して、電気刺激で培養細胞で神経細胞死が防げる条件を再度検討して、分子遺伝学的検討を行う。
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