研究実績の概要 |
神経交叉術は近年、有効な神経機能再建術の一つとして臨床的にも応用されている。しかし、異なる神経を中枢側神経として用い、交叉した遠位神経に繋がる標的器官が合目的な機能を発揮しうるメカニズムは未解明ところが多い。 マウス腕神経叢の支配髄節を明らかにする目的で、カルボシアニン蛍光色素を用いて逆行性に神経標識を行い、前根、後根神経節を連続的に観察した結果、筋皮神経はC5,6,7レベル、尺骨神経は少数のC7支配を認めたが大部分はC8,T1レベルであり、ヒトと同様であることを確認した。 マウス筋皮神経と尺骨神経交叉モデルを作製し、交叉術後の交叉神経近位が尺骨神経・遠位が筋皮神経の場合は支配髄節レベルは変わらないが、反対の組み合わせである交叉近位が筋皮神経で遠位が尺骨神経の場合は筋皮神経の髄節に加え尺骨神経レベルの髄節も追跡されることがわかり、神経可塑性により、支配髄節の変化が起きることを見いだした。 今年度はマウス神経交叉モデルで透徹標本を作製し可塑性発現経路の追跡を行う一方で、生理学的検討として筋皮神経神経を切離放置する群、一旦切離し縫合したグループおよび近位尺骨神経に遠位筋皮神経を交叉したモデルで神経切離部より近位で電気刺激し、上腕二頭筋の筋収縮電位を拾うと後二者のグループでは上腕二頭筋の収縮電位が記録された。すわなち異種の神経交叉をしても上腕筋の再支配が起こることが判明した。さらに交叉部位より近位の下神経幹レベルで電気刺激し、上腕二頭筋のM波を測定予定である。仮説として下神経幹の刺激で上腕二頭筋が収縮すると予想される。またコントロールの未手術マウスの下神経幹の電気刺激ではニ頭筋は収縮しないと予想される。
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