研究課題
昨年に引き続き研究は二つの方向性を持たせて進めた。すなわち、1)外傷・敗血症における易血栓性(DIC)の遺伝子多型の国際比較研究、2)1)の研究課題に関係する外傷・敗血症における生体反応とDICに関連する臓器不全発症機序に関する研究である。1)はすでに研究代表者が約10日間バングラデシュ国に滞在し、同国ボグラ大学と共同研究を行う契約を締結しているが、この契約に基づき外傷および敗血症症例の検体収集を継続して実施した。ボグラ大学研究協力者の異動があり検体収集が一時頓挫したが、現在は検体収集を再開する事ができた。収集した検体は保管し今後の解析に使用予定である。2)に関しては、研究代表者施設において収集した検体を使用して研究を進めた。昨年度に報告したように、外傷・敗血症症例においてdamage-associated molecular patterns (DAMPs)であるhistone H3, H4、補体経路活性化産物であるC3a, C5a、凝固線溶系で凝固制御機能の主軸を占めるactivated protein C (APC)の測定を実施した。H3, H4, C3a, C5aの商業ベースの測定系が確立していないためか、外傷・敗血症ともに大きな変化を認めることができなかった。外傷後凝固線溶系変化の病態生理を究明するために、DICとAPCの関係を検討した。外傷後にAPC, soluble fibrin (SF)、soluble thrombomodulin (sTM)を測定し、DIC症例では非DIC症例に比較してこれらが全て有意に低値となることを証明した。この結果は、外傷後DIC症例では血管内皮細胞傷害に伴い(sTM)、凝固制御機能の主軸であるAPCが減少し、これが 播種性血管内トロンビン産生(SF)を来すことが明らかになった。
4: 遅れている
バングラデシュ国共同研究機関及び関連施設で症例収集を開始したが、2014年暮れに研究協力者の異動があり後任決定に時間を要し症例収集が2015年9月まで中断した。症例数が解析に必要な目標症例数に到達せず、研究期間を延長して症例収集を継続する必要がある。
現時点で症例数が当初の解析に必要な目標症例数に到達していないために症例収集を継続し、今年度未使用額は遺伝子多型、凝固線溶系および補体経路活性化の指標測定に使用する。その上で、1)外傷・敗血症における易血栓性(DIC)の遺伝子多型の国際比較研究、2)1)の研究課題に関係する外傷・敗血症における生体反応とDICに関連する臓器不全発症機序に関する研究を継続して行う予定である。
共同研究機関であるバングラデシュ国Shaheed Ziaur Rahman Medical College & Hospital及び関連施設で症例収集を開始したが、2014年暮れに研究協力者の異動があり症例収集が2015年9月まで中断したため未使用額が生じた。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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