研究課題/領域番号 |
25293365
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松田 直之 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50332466)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 敗血症 / 線維症 / 多臓器不全 / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
本年度は,敗血症モデル動物として盲腸結紮マウスにおける間葉性多能性幹細胞の評価を,主要臓器細胞において施行した。また,トロンビン受容体シグナルが細線維芽細胞における増殖を促すことを見出した。 ヒト胎児肺由来線維芽細胞株IMR-90において,トロンビンは10μg/mLまでの培地濃度において,濃度依存的に線維芽細胞にprotease activated receptor 1(PAR1)の発現を高めた。この線維芽細胞におけるトロンビンのPAR1発現の増加作用は,トロンビン暴露から2-3時間をピークとした。一方,この繊維芽細胞におけるトロンビンのPAR1活性化において,繊維芽細胞にiNOSやPAI-1が高発現し,線維芽細胞が炎症とともに線溶抑制に関与することを確認した。さらに,トロンビン刺激を受けたIMR-90株は,アクチンフィラメントを発現させ,myofibroblastとして増殖することが確認できた。 一方,マウス盲腸結紮穿孔モデルでは,肺や心房筋に線維芽細胞の進展が観察された。雄性BALB-Cマウス8-12週齢において,心臓内におけるPAR1mRNAの発現は,GAPDHを標準として,右心耳>左心耳>右心室>左心室の順であり,右心房はPAR1mRNAが高発現だった。これは,免疫組織染色像でも同等であり,PAR1発現を右心耳と三尖弁に強く認めた。このようなトロンビン受容体は,敗血症病態マウスの肺や心房筋における線維芽細胞にも強く発現していた。トロンビン受容体阻害薬は,敗血症状態における遠位が細胞の増殖を抑制することを確認した。現在,この敗血症病態マウスに,Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycの遺伝子を導入し,線維芽細胞の特徴をする評価している過程にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在,この敗血症病態マウスに,Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycの遺伝子を導入し,線維芽細胞の特徴をする評価している過程にある。この遺伝子導入効率が,期待するほど良好ではなく,特に線維芽細胞における形質変化が認めにくい。平成27年度は,この研究系を発展させる指針として,ヒト胎児肺由来線維芽細胞株IMR-90などを用いた培養細胞系の検討を推進する指針としている。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症の時系列で,経気管投与でセンダイウイルスベクターやリポゾーム法を用いてOct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycなどの転写因子を肺などの主要臓器に導入し,主要臓器の組織学的変化を解析する。主な評価組織は,肺,心筋,肝臓,腎臓,脾臓,腸管,膵臓,副腎,脳および大動脈であり,組織基本評価として,ヘマトキシリン・エオジン染色像,および線維化組織の評価としてのシリウスレッド染色を行う。さらに,共焦点レーザー顕微鏡による多重免疫染色により,in vivoにおけるiPS細胞や間質系多能性分化細胞の分子局在をより明確なものとする。すなわち,各組織の凍結切片,あるいはパラフィン切片を用い,線維芽細胞染色(抗 Fibroblast Surface Protein 抗体,抗 S100A4 抗体,抗 Prolyl-4-Hydroxylase β 抗体などの線維芽細胞特異抗体を用いた組織染色),核染色(ヘキスト染色),組織間質染色(抗ビメンチン抗体染色),血管内皮細胞染色(抗von Willebrand factor抗体染色など),さらに透過像を加え,間葉系細胞の分布と組織構造変化を評価する。 また,線維芽細胞の培養細胞研究系において,敗血症病態を模倣した培地として,LPS,増殖因子(TGF-β,FGF)が加わった条件で,Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycの4つを遺伝子導入したセンダイウイルスベクター(DANVEC株)の遺伝子導入を行い,線維芽細胞のiPS細胞変異についてのLPSや増殖因子の修飾作用を時系列で評価する。 さらに,平成27年度は,平成26年度までに達成できなかった研究内容を補足するとともに,重症度や組織再生度の異なる2系統以上の敗血症モデルマウス群において,上述の優位な遺伝子治療方法を組み合わせ,敗血症の組織再生と生存率を高める方法を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子導入による研究が,導入効率が悪いために,検討課題として留保したため,この研究計画の遅れにより,研究費が次年度に持ち越されている。解決策を検討した結果として,次年度に研究が遂行される。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子導入による線維芽細胞の変化の観察として,この研究費費用に用いられる。
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