研究課題/領域番号 |
25293365
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松田 直之 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50332466)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 敗血症 / 線維芽細胞 / Oct3/4 / Sox2 / Klf4 / c-Myc |
研究実績の概要 |
ヒト線維芽細胞IMR90 の細胞培養において,アドレナリンβ受容体刺激やトロンビン刺激により,IMR90は増殖と筋線維芽細胞化の速度を早めることを確認した。IMR90は,アドレナリンβ受容体-1,-2,-3の各サブタイプを発現しており,ドブタミン10 nmoL/L以上のβ受容体刺激薬により増殖速度を速めるとともに,筋線維芽細胞への分化速度を速めることを確認した。一方,アドレナリンβ受容体刺激において,これらのアドレナリン作動性β受容体の各サブタイプの選択的阻害薬では,IMR90の増殖作用や筋繊維芽細胞への分化を完全に抑制することができず,最大で40%レベルまでの抑制にとどまり,すべての受容体サブタイプの選択的拮抗薬で完全に制御できた。以上より,β受容体各サブタイプがドブタミンによるIMR90の増殖に関与することを見出し,これらはすべてのβ受容体サブタイプが関与していると結論した。また,生体内では炎症期にトロンビンの産生が高まる。トロンビンを1 μmoL/Lあるいは10 μmoL/Lの濃度とした培地では,IMR90の増殖と筋線維芽細胞への分化の速度が約1.5倍に速まることを確認した。このトロンビン刺激によるIMR90の増殖とアドレナリンβ受容体刺激によるIMR90の増殖は相加的作用だった。さらに,盲腸結紮穿孔によるマウス敗血症モデルでは,敗血症の時系列で心房筋や腎臓に線維芽細胞の増殖が高まることを,免疫組織学的手法で確認した。このような交感神経刺激やトロンビン刺激で増加する線維芽細胞に対してのOct3/4,Sox2,klf4,c-Mycの遺伝子導入の与える影響を,次年度の最終課題としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ヒト線維芽細胞IMR-90 の細胞培養系において,アドレナリンβ受容体刺激やトロンビン刺激により,線維芽細胞増殖と筋線維芽細胞化することを見出した。敗血症病態に近いIMR-90細胞の細胞培養環境を構築するために,交感神経刺激としてカテコラミン,凝固系因子としてトロンビンの線維芽細胞に対する反応性を確認し,これらの受容体発現と評価し,これらの受容体刺激の拮抗により線維芽細胞の抑制を確認することに多くの時間を必要とした。ヒト線維芽細胞の反応系において,Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycなどの転写因子の導入にを行う段階の確認とできた。一方,盲腸結紮穿孔によるマウス敗血症モデルにおいても,線維芽細胞の発現の免疫組織学的評価に時間を必要とし,Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycなどの転写因子の導入による繊維芽細胞の特質変化に対しての検討が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症モデル動物の時系列で,Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycなどの転写因子を肺などの主要臓器に導入し,主要臓器の組織学的変化を解析する。主な評価組織は,肺,心筋,腎臓,脾臓および大動脈であり,組織基本評価として,ヘマトキシリン・エオジン染色像,および線維化組織の評価としてのシリウスレッド染色を行う。さらに,共焦点レーザー顕微鏡による多重免疫染色により,in vivoにおけるiPS細胞や間質系多能性分化細胞の分子局在をより明確なものとする。各組織切片は,線維芽細胞染色(抗 Fibroblast Surface Protein 抗体,抗 S100A4 抗体,抗 Prolyl-4-Hydroxylase β 抗体などの線維芽細胞特異抗体を用いた組織染色),核染色(ヘキスト染色),組織間質染色(抗ビメンチン抗体染色),血管内皮細胞染色(抗von Willebrand factor抗体染色など),さらに透過像を加え,5重像として各臓器におけるiPS細胞や間葉系細胞の分布と組織構造変化を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子導入に用いる試薬および遺伝子の使用量を減じ,本年度の使用を目的としたため。
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次年度使用額の使用計画 |
ヒト線維芽細胞および敗血症モデルマウスに対して,Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycなどの転写因子を作成し,遺伝子導入として繊維芽細胞の特質変化を観察する。
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