研究課題/領域番号 |
25293366
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田崎 修 長崎大学, 病院(医学系), 教授 (90346221)
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研究分担者 |
田島 吾郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (00437427)
朝野 和典 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40202204)
嶋津 岳士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50196474)
松本 直也 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50359808)
山野 修平 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (60570538)
小倉 裕司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70301265)
廣瀬 智也 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70597509)
関 雅文 大阪大学, 医学部附属病院, 講師 (80432970)
濱口 重人 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20735360)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | NETs / Citrullinated Histone H3 |
研究実績の概要 |
今年度は、重症患者の血液中におけるNETs、およびNETs発現の前段階と考えられるCitrullinated Histone H3(Cit-H3)の存在を明らかにし、さらに血液中のNETsあるいはCit-H3の発現と、誤嚥との関連が非常に強いことも明らかにし論文発表した。 また、人工呼吸器管理となったARDS症例および特発性肺線維症が急性増悪した7例において吸引痰のNETsの変化と予後との関連について検討し学会発表を行った。PaO2/FIO2(P/F)が200未満となってから24時間以内に吸引痰を採取し、その後経時的にP/FとNETs発現量(NETsの長さ)を測定した。生存した2例では、NETs発現の減少とともにP/Fratioは改善し、人工呼吸器から離脱できた。一方、死亡した5例では、P/Fは改善せず、NETs発現は持続した。この結果は、NETsが上記呼吸不全と強い関連があることを示唆している。 さらに、我々は軟部組織感染症の膿汁中には、最初のドレナージ、あるいはデブリドマンの時には好中球が存在するが、NETsは認められないことに着目して研究を行った。5例の軟部組織感染症において、膿汁を調査したところ、すべての症例で好中球が認められたがNETsは1つの検体にも認められなかった。一方、ドレナージをして全身状態が改善した時の膿汁を調べると、5例全例でNETsの発現が認められた。この現象は、NETsが膿汁中では有効に作用できないメカニズムが働いている可能性を示唆している。すなわち、低酸素環境や膿汁中に含まれている物質が、NETsの発現を抑制しているか、DNase等が作用し、発現したNETsをただちに分解していること等が推定される。このメカニズムの解明は、NETs制御による治療戦略の提案にとって極めて重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
重症病態におけるNETs発現の応答性の評価に関しては、血液中におけるNETs、およびNETs発現の前段階と考えられるCitrullinated Histone H3(Cit-H3)の存在を明らかにし、さらに血液中のNETsあるいはCit-H3の発現と、誤嚥との関連が非常に強いことも明らかにし論文発表した。また、ARDSや特発性肺線維症の急性増悪の症例の吸引痰において、NETsが発現し、死亡例(n=5)ではそれが持続すること、一方生存例(n=2)ではNETsが消褪していくことを発表した。この関連を明確にするには、さらなる症例の蓄積が必要である。また、NETsの発現に個人差があるか否かについては、in vitroの実験でも確認する必要がある。このため、いまだ、NETsの制御による重症病態の治療の段階には入っていない。 新規炎症起動システムとしてのインフラマソームを中心とした自然免疫の活性化に関する研究に関しては、動物モデルの作成や測定システムの確立に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
呼吸不全におけるNETsの変化と病態との関連に関する検討:昨年度に引き続き呼吸不全に陥った患者の吸引痰を採取し、NETs発現と臨床経過との関連を明らかにするとともに、好中球を採取し、それを用いて種々のNETs刺激因子やステロイド等を用いて好中球の応答性を明らかにする。 膿汁中におけるNETs発現のメカニズムの解明:ドレナージやデブリドマンを施行する前にはNETsが認められない原因を突き止めるため、好中球を低酸素環境下に置き、好中球のNETs産生能の変化を測定する。また、臨床検体において、膿汁中のDNaseの濃度変化を測定する。 また、将来的に炎症反応の制御を可能にするため、自然免疫受容体発現のパターン解析による発熱反応の新規鑑別法の開発という新しい視点からも研究を開始する。具体的には以下の様に研究を進める。 動物モデルにおける自然免疫受容体(PRRs)の遺伝子、蛋白発現の経時的測定:細菌感染モデル、ウイルス感染モデル、広範囲熱傷等の無菌的炎症モデル、および薬剤アレルギーモデルとコントロール群で受傷(感染)後6,12,24,48時間にマウスを安楽死させて、血液、および脾臓をサンプリングする。そして、血液のPRRsの遺伝子発現解析、および脾臓におけるPRRsの蛋白発現の解析を行う。 動物モデルにおける自然免疫受容体(PRRs)発現のレーダーチャート表示とパターン解析:PRRsの発現パターンをレーダーチャートに表示し、最大値のパラメーターが1となるように表示する。そして、チャートを図形のパターン認識理論の流れ(観測→前処理→特徴抽出→識別)に当てはめて図形の特徴の抽出を行う。特徴1をチャート内面積、特徴2をチャートを左右に2分割した面積比としてグラフ化し、各軸でカットオフ値を定めて発熱反応の鑑別を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ARDSや特発性肺線維症の急性増悪の症例の吸引痰においてNETsが発現し、死亡例(n=5)ではそれが持続すること、一方生存例(n=2)ではNETsが消褪していくことを発表した。この関連を明確にするには、さらなる症例の蓄積が必要である。また、NETsの発現に個人差があるか否かについては、in vitroの実験でも確認する必要がある。このため、当初の目的であるNETsの制御による重症病態の治療の段階には未だ入ることができていない。 新規炎症起動システムとしてのインフラマソームを中心とした自然免疫の活性化に関する研究に関しては、動物モデルの作成や測定システムの確立に時間を要した。
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次年度使用額の使用計画 |
呼吸不全におけるNETsの変化と病態との関連に関する検討:昨年度に引き続き呼吸不全に陥った患者の吸引痰を採取し、NETs発現と臨床経過との関連を明らかにするとともに、好中球を採取し、それを用いて種々のNETs刺激因子やステロイド等を用いて好中球の応答性を明らかにする。 膿汁中におけるNETs発現のメカニズムの解明:ドレナージやデブリドマンを施行する前にはNETsが認められない原因を突き止めるため、好中球を低酸素環境下に置き、好中球のNETs産生能の変化を測定する。また、臨床検体において、膿汁中のDNaseの濃度変化を測定する。また、将来的に炎症反応の制御を可能にするため、自然免疫受容体発現のパターン解析による発熱反応の新規鑑別法の開発という新しい視点からも研究を開始する。
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