研究課題/領域番号 |
25293366
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田崎 修 長崎大学, 病院(医学系), 教授 (90346221)
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研究分担者 |
田島 吾郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (00437427)
朝野 和典 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40202204)
嶋津 岳士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50196474)
山野 修平 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (60570538)
小倉 裕司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70301265)
廣瀬 智也 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70597509)
小島 将裕 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70721091)
竹川 良介 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30759577)
萩谷 英大 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (30718531)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | NETs |
研究実績の概要 |
我々は、軟部組織感染症等の膿中において、初回ドレナージ中にはNETsは認められないが、ドレナージ後にはNETsがみられるようになることを発見した。そこで、嫌気的環境下では、NETsの発現が低下するという仮説をたて、健康成人(n=5)から抽出した好中球をphorbol myristate acetateで刺激した。その結果、低酸素環境下ではNetsの発現率が平均で57.8%(p=0.13)低下した。このことは、嫌気的環境がNEts発現に不利であることを示唆している。 感染状態と非感染状態を鑑別するのは、熱傷や外傷等全身に著明な炎症が起こっている状況では極めて難しい。我々は、複数の自然免疫受容体の遺伝子発現のパターン解析により鑑別が可能という仮説をたて研究を行った。非感染モデルとしてマウスの20%熱傷モデルを、感染モデルとして盲腸結紮穿通モデルを使用した。その結果、TLR2, TLR4、およびNLRP3の遺伝子発現はコントロールに比較して両損傷モデルで有意に上昇すること、TLR9の遺伝子発現は感染モデルにおいて熱傷やコントロール(シャムモデル)に比較して有意に低下することが明らかとなった。これをレーダーチャートでパターン解析すると感染モデルと非感染モデルが明瞭に区別できることが示唆された。 昨年度の新しい取り組みとして、好中球解析の新たな手法であるハイパースペクトラルイメージングを取り入れた。ハイパースペクトラルイメージングはマラリアに感染した細胞や抗体を産生する細胞の診断に用いられるようになり注目を集めている。人の目は概ね3つの光の帯(緑、赤、青)しか認識することができないが、ハイパースペクトラルカメラは151の光の帯を認識することができる。予備的研究として、呼吸器感染例(n=2)と尿路感染例(n=1)の喀痰および尿の検体を採取し、グラム染色したスライドをハイパースペクトラルカメラで観察した。その結果、感染の時期によって好中球の波長の分布に変化が現れることを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
呼吸不全におけるNETsの変化と病態の関連に関する検討においては、研究の見直しが必要となった。動物モデルにおける自然免疫受容体の遺伝子、蛋白発現の継時的測定は、想定以上に時間を要した。本研究課題においては、様々な病態におけるNETsの動態を明らかにしたが、当初の目的であるNETsの制御による治療戦略の提案には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
様々な病態の中から、NETsと予後が最も関連する病態を明らかにする。各疾患毎に経時的にNETs形成の推移を把握するとともに、予後に関連する因子およびそのポイントを明らかにする。基礎、および臨床の両面からアプローチする。 対象とする病態は敗血症、ARDS、熱傷、軟部組織感染症、等とし以下の手法を解析に用いる。 ・ハイパースペクトラルカメラ:ハイパースペクトラルカメラは、人間の目や従来のRGBカメラでは認識できなかった対象の特性や情報をとらえることができる。これを用いて様々な病態における好中球のスペクトル情報を解明する。 ・低酸素あるいは酸性環境下でのNETs産生:膿瘍内等の特殊環境下ではNETs産生が低下する。これをin vitroで再現し、病態解析と治療法開発を目指す。 ・マウスの重症病態モデルにおけるNETsの評価:継時的に血液中の炎症マーカーやDAMPs、自然免疫受容体(PRRs)の遺伝子発現を測定し、NETsの免疫染色を行い、NETs発現と重症病態の関係を評価する。マウスは受傷3,6,12,24,48時間後にsacrificeして心腔内採血を行う。血液検査では、白血球数、TNF-α、IL-6、IL-8、IL-10、HMGB-1、circulating free DNAを測定する。遺伝子発現は、末梢血からRNAを抽出し、プライマーはPRRsとしてTlr2、Tlr4、Tlr9、Nlrp3、Nlrc4、Rig-Iを、内部コントロールとしてRps18を用いて、内部コントロール比としてmRNAを定量化する。NETsはDNA、histone-H3、および好中球エラスターゼの3重染色により同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた「膿汁中におけるNETs発現メカニズムの解明」に関しては、予備的研究にとどまった。「呼吸不全におけるNETsの変化と病態との関連に関する検討」は研究の見直しが必要となった。「動物モデルにおける自然免疫受容体発現のレーダーチャート表示とパターン解析」は予備的研究結果がでたところで、今後解析をさらに進める予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、様々な病態の中から、NETsと予後が最も関連する病態を明らかにする。各疾患毎に継時的にNETs形成の推移を把握するとともに、予後に関連する因子およびそのポイントを明らかにする。基礎、および臨床の両面からアプローチする。 対象とする病態は敗血症、ARDS、熱傷、軟部組織感染症、等とし、ハイパースペクトラルイメージング(ハイパースペクトラルカメラを使用)、低酸素あるいは酸性環境下でのNETs産生(in vitro)、マウスの重症病態モデルにおけるNETsの評価等の研究も行う。
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