研究課題
基盤研究(B)
本研究では、細菌感染時の菌体排除・免疫誘導機構として注目されるオートファジーについて、Atg5依存性の選択性オートファジーとAtg5非依存性のRab9により誘導される代替性オートファジーの菌体認識・分解に関わる分子機構を明らかとする.この機構を明らかとすることで、 i) 細胞内に侵入した菌を分解して排除するための機構、ii) 細胞内での菌の動態を菌種別に高精度に感知して、有効な炎症・免疫誘導・抑制を行うためのスイッチング機構としての機能、iii) 菌体を効率良く排除するためにAtg5依存性・非依存性双方の膜誘導を制御するための機構を解明することとなり、様々な細菌感染症に対する生体の新たな防御機構の制御を可能とするだけでなく、創薬標的の同定、種々の細菌感染症の発症メカニズムの解明につながると考えられる.そこで、平成25年度では、Atg5依存性・非依存性オートファジーにおける細菌感染の認識、特にA群レンサ球菌特異的に誘導されるオートファジーに必要となる(1) Atg5依存・非依存性のオートファジー誘導に必要なPAMPs, DAMPsを認識する分子の同定.(2) Atg5依存・非依存的に誘導されるA群レンサ球菌特異的オートファジーの分子メカニズム解明.特に、Rab9と結合する分子の網羅的な解析、また同様にA群レンサ球菌感染時に必須となるRab23と結合する分子の網羅的な解析によりそのネットワークを解明することを目的とした.
2: おおむね順調に進展している
平成25年度では、オートファゴソーム形成に関わるRabタンパク質のスクリーニングを行った.現在60種あるヒトのRabタンパク質のほぼ全ての発現系を構築し、A群レンサ球菌の感染によってオートファゴソーム形成に関わるほぼ全てと考えられるRabタンパク質を同定した.これは、飢餓誘導時に誘導されるオートファゴソーム形成で誘導されるRabタンパク質の分布とは大きく異なり、細菌感染で誘導される巨大な膜の誘導には、通常では使用されることのないRabタンパク質群をも動員されていることが明らかとなった.また、これまでオートファゴソーム形成に必須であるAtgタンパクについては、これまでKOマウス由来のMEF細胞が使われてきたが、ゲノム編集法によりHeLa細胞などの培養細胞系でもAtg5, Atg7などのオーファゴソーム形成に必須なタンパク質群のKO細胞株の作成に成功することができた.そのため、Atg5依存性・非依存性のA群レンサ球菌誘導に関わるAtg遺伝子群と、それに関わる菌体成分認識分子のスクリーニングにも、これらの培養細胞を使用できるようになった.そのため、これまでMEF細胞でのみ解析を行ってきた解析が、ヒト由来細胞でも解析が可能となったため、解析の精度が上がった.細胞内の菌体認識成分の1つであるNRLX1に着目し、その相互作用する因子の解析を行ったところ、NRLX1と相互作用を行う因子の1つが炎症反応の誘導制御に関わっていることを明らかにすることができたため、これらの分子を細胞死の誘導に関わる因子をさらに詳細に検討する.
上記の結果を踏まえ、平成26年度は以下の項目の研究を行う.1. A群レンサ球菌感染特異的に誘導される選択性および代替性オートファジーに関連するTLRs、NLRsの機能解析.選択性および代替性オートファジーの誘導に必須なTLRs、NLRsの下流の分子群に着目し、炎症反応に関わるシグナル伝達因子を同定する.ここでは、分子と会合するシグナルパスウェイにある分子群の機能を解析すると共に、Luciferaseアッセイによる解析を行う.2. Rab9、Rab23結合因子の細胞内動態の機能解析.H25に得たRab9あるいはRab23の結合分子群について、GFPタグ、mCherryタグ、および抗体を用いた免疫染色法により、その細胞内局在を同定する.3. A群レンサ球菌変異株を用いた機能解析.これまで同定した新規分子を強発現あるいはノックダウンした培養細胞系において、A群レンサ球菌の表層抗原、分泌タンパク、二成分制御系の各遺伝子破壊株(40株程度)の感染モデルを構築し、上記1の結果も踏まえて、菌側の責任担当構造を解析する.4. A群レンサ球菌感染時における炎症反応の遺伝子発現系の網羅的解析.上記1~3で得られた結果をふまえ、細胞分子の各変異体の細胞導入時や各変異菌株の感染時における炎症性サイトカインの遺伝子発現変化のパターンを高速シーケンサーにより解析する. また、これらのサイトカイン遺伝子の発現調節遺伝子についても同様に発現パターンを解析する. これらの解析は、Atg5依存・非依存性オートファジーのそれぞれ誘導時に行う.
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