研究課題
本研究は生理的骨吸収および炎症性骨吸収に対する酸化脂質受容体LOX-1の役割の解明を目的とする。【材料および方法】4~8週齢のLOX-1欠損(KO)および野生型(WT)マウスの骨形態計測およびsRANKLとM-CSFによるin vitro OC形成を行った。更に、in vivoのLPS誘導炎症性骨吸収モデルを用いた炎症性骨吸収に対するLOX-1の役割を検討した。同時に、OC前駆細胞(OCpre)と分離骨芽細胞(OB)の共存培養系から、炎症性骨吸収へのLOX-1の関与について検討した。【結果および考察】成長期のLOX-1 KOマウス大腿骨では、骨吸収パラメーターの増加に伴い、WTマウスと比較して海綿骨量が減少した。また、LOX-1 KOマウスのsRANKLとM-CSFによるin vitroのOC形成は、WTマウスに比べ増加した。これらはLOX-1 KO のOCにおける細胞融合関連タンパク質Atp6v0d2およびDC-STAMPの細胞膜での蓄積がWT OCに比べて増加したこととの関連が示唆された。一方、頭蓋骨にLPSを投与し炎症性骨吸収を誘導すると、LOX-1 KOマウスではRANKL発現上昇がWTマウスに比べ低下し、それと並行して骨吸収上昇も低下した。さらに、WT OBとWT OCpreの共存培養においてIL-1βとPGE2処理で大きく促進したOC形成は、LOX-1 KO OBとWT OCpreの共存培養で減少した。これと一致して、OBのIL-1βとPGE2処理またはLPSによるRANKL発現がWTに比べLOX-1 KO OBで低下した。これらは炎症部位でのRANKL発現がLOX-1に依存していることを示すと同時に、LOX-1依存性RANKL発現細胞の1つとして骨芽細胞が考えられた。【結論】本研究はLOX-1が定常状態における破骨細胞形成を促進するが、LPS誘導炎症性骨破壊には抵抗性を示すことを明らかにした。本研究からLOX-1は生理的破骨細胞形成および炎症性骨吸収のいずれにおいても重要な受容体であることが明らかとなった。以上の成果に加え、LOX-1と全く正反対の表現型を示すLDL受容体(LDLR)とLOX-1のダブルKOマウスの作成にも成功し系統化した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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BONE
巻: 75 ページ: 170-182
10.1016/j.bone.2015.02.025.