研究課題
基盤研究(B)
我々は、骨形成促進剤の新しい薬剤標的として骨芽細胞上の膜結合型RANKLを想定している。すでに、RANKL結合能のあるペプチドが局所の骨形成活性を上昇させ、頭蓋骨に穴をあけたマウスモデルでも欠損部の完全な骨修復が可能であることを示してきた。しかし、高濃度のペプチドでないと骨形成活性を示さないことから鑑みて、ペプチドの骨形成促進作用は、骨芽細胞上のRANKLのオリゴマー化が必要であるという仮説を立てた。RANKL結合ペプチドをリポゾーム化させれば、骨芽細胞近傍に高密度のRANKL結合ペプチドを配することが出来ると考え、全身投与(静脈内注射)あるいは、局所投与(ゼラチンハイドロゲル担体を用いた頭蓋骨欠損モデル)によりリポゾーム化したRANKL結合ペプチドの骨形成活性を検討した。まず、合成されたリポゾーム化ペプチドが、RANKLの逆シグナルを活性化し、骨芽細胞の骨形成活性を上昇させるか否かを検討したところ、骨芽細胞のRANKL逆シグナルの活性化を認めたことから、in vivoにおける骨形成活性を検討した。しかしながら、リポゾーム化したRANKL結合ペプチドは全身投与においても、局所投与においても、期待された骨形成促進作用は認められなかった。RANKL結合ペプチドはリポゾームの周りに2%外側に向くように合成したが、ペプチドの含有率が低いために、RANKLのオリゴマー化が誘導できず、骨形成活性を示さないのではないかと考え、ペプチドの割合を増やしたリポゾームを合成しようと試みた。しかしながら、ペプチドの疎水性が強いためか、ペプチド含有率を増やすと凝集しやすくなり、うまく合成できないことが分かった。現在、高濃度のRANKL結合ペプチドでは示される骨形成活性を如何に発揮させるか、親水性の強いRANKL結合ペプチドのスクリーニングをファージディスプレイ法を用いて始めている。
3: やや遅れている
当初考えていたRANKL結合ペプチドのオリゴマー化により低濃度のペプチドでも人工的にRANKLのオリゴマー化が誘導され、骨形成活性が上昇すると考えていたが、ペプチドをリポゾーム化する過程で、凝集性が高いことが問題となり、RANKLの逆シグナルは入るものの、in vivoの骨形成活性を上昇させることができないという結果になっている。このため、達成度はやや遅れていると区分した。しかしながら、共同研究者と共に、骨形成活性が発揮されなかった問題解決に向けて取り組んできており、有機合成法、あるいは製剤化の工夫ととともに、新規のRANKL結合ペプチドのスクリーニングが進んでおり、現在までの達成度はやや遅れているが、26年度には期待される結果を得ることが出来るのではないかと考えている。
上述のように、最初の試作製剤であるリポゾーム化したRANKL結合ペプチドの骨形成活性が発揮されなかったが、合成法を工夫することにより、易凝集性を解決できると考えている。また、ペプチド自体を凝集しにくい親水性のペプチドに変えて、リポゾーム化を再度試みる予定である。このために、研究分担者の本間雅博士が、RANKLペプチドのリポゾーム化など骨芽細胞活性を上昇させるペプチドを含有した有機合成を行っていただいており、また、研究協力者の大阪大学薬学研究科堤 康央 研究科長、吉岡靖雄准教授、独立行政法人医薬基盤研究所・サブリーダーの向 洋平 先生のご協力により、親水性のRANKL結合ペプチドのスクリーニングを行っていただいている。随時、提供される薬剤候補の骨形成活性を骨芽細胞を用いたin vitroアッセイにより、骨形成活性上昇作用を確認し、RANKL逆シグナルの活性化も確認したうえで、in vivoの全身投与(静脈内投与)、あるいはゼラチンハイドロゲルを担体として用いた頭蓋骨欠損モデルにおける骨形成活性を骨形態計測学的に検討する。静脈内投与においては、リポゾーム化薬剤を用いた際におこる特有の生物学的陰性作用を避けるために、その投与回数および頻度を変えて、一番骨形成作用が発揮されるように工夫をする。また、骨形成面特異的に薬物送達するペプチドと結合させ、さらに骨形成能を高める工夫も行う予定である。さらに、RANKL逆シグナルに重要なRANKLの細胞内ドメイン中、一つのアミノ酸を変異させたRANKL変異マウスを用いて創薬候補の作用メカニズムをRANKLを介した作用であるか否かを明らかにする。以上の共同研究を推し進めることにより、RANKLに結合するペプチドを骨形成促進剤のリード化合物として創薬できる学術的基盤を構築できるものと思われる。
事務手続きの関係上、次年度の使用額として計上することとなったため。事務手続き上のことであり、すぐに使用したいペプチドの合成費用など、消耗品費として使用する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (19件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
J Oral Biosciences
巻: 55 ページ: 47,54
10.1016/j.job.2012.12.005
巻: 55 ページ: 217,223
10.1016/j.job.2013.06.008
J Biol Chem
巻: 288(8) ページ: 5562,5571
10.1074/jbc.M112.426080
J Bone and Mineral Res
巻: 28(12) ページ: 2449,2462
10.1002/jbmr.1936
Odontology
巻: 12 ページ: -
10.1007/s10266-013-0140-3
J Bone and MIineral Res
巻: 28( 6) ページ: 1457,1467
10.1002/jbmr.1866
Biomechanics and Modeling in Mechanobiology
巻: 12(2) ページ: 325,333
10.1007/s10237-012-0401-z
http://www.tmd.ac.jp/hpha/index.html