研究課題
我々は骨芽細胞膜上のRANKL(receptor activator of NF-kB ligand) はリガンドとしてではなく、骨芽細胞内にシグナル(逆シグナル)を通す受容体としても働いていると仮定して仕事を進めてきた。すでに、研究分担者の本間雅先生のグループでは2009年から骨芽細胞あるいは骨細胞でRANKL逆シグナルの存在を示す報告を行っている。この一連の発表ではRANK刺激によりRANKLを含んだ小胞体の膜輸送が促進すると報告しているが、本研究によりRANKL結合ペプチドによる骨形成活性促進作用もこの逆シグナルを通すことを見出した。このことは、RANKLが骨形成促進作用を持つ新規薬物開発のターゲット分子になることを示唆している。大阪大学薬学部との共同研究により、RANKLに結合するペプチドのスクリーニングをファージディスプレー法によりすすめた結果、すでに骨形成促進作用を報告しているRANKL結合ペプチドW9のシークエンスを組み込んだファージよりもRANKL親和性の高いファージがいくつか見つかってきた。W9ペプチドとは別のRANKL結合ペプチドXの骨形成促進能はW9ペプチドより強いことが分かっていたが、この骨形成促進作用の違いを逆シグナルの強弱により説明できるか否かを確かめるために、骨芽細胞株ST-2を用いてW9ペプチドとペプチドXそれぞれの刺激による逆シグナルの強さを比較したところ、ペプチドXの方がW9よりも逆シグナル強度が強いことがシグナル分子のリン酸化レベルの強さの差として示され、ペプチドXとW9との骨形成促進能差が逆シグナルの強度の差としても説明できることが示唆された。ペプチドXの骨形成促進能をリウマチ関節モデルで試したところ、膝関節部の骨端部や2次海綿骨部において、骨吸収抑制作用とともに骨形成促進作用を発揮することが骨形態計測法により明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
25年度はリポゾーム化したペプチドの骨形成促進作用が明らかではなかったが、26年度はRANKLに結合するペプチドXの作用が明らかになるとともに、in vivoモデルでも骨形成促進作用が明らかになり、RANKLを新たな骨形成のターゲットとするための研究目的が一歩前進したため。共同研究として進めているファージディスプレー法によるRANKL結合ペプチドのスクリーニングだが、27年度に期待できる成果が上がっていることも理由の一つである。
27年度はRANKLに結合するペプチドXを用いて、すでに昨年度良い成果が上がっている関節リウマチモデルを用いた解析だけでなく、歯科領域の関連モデルを用いてペプチドXの骨形成促進作用を明らかにする予定である。新たに用いるモデルとして、切歯を抜歯した後の骨新生を解析する切歯抜歯窩モデルと上顎粘膜下の骨が欲しい場所に担体とともにペプチドを注射で打ち込む上顎骨骨新生モデルを用いる。ペプチドXだけでは期待した骨新生が認められない場合はBMP-2との併用も検討する。25年度から取り組んでいるペプチドのリポゾーム化による骨形成促進作用を増強する試みも進め、リポゾーム周囲のPEGに反応させるペプチドXの割合を2%から5%に増やすことにより骨形成促進能が向上するか否かをRANKL逆シグナル指標の解析と頭蓋骨骨欠損モデルの解析により明らかにする。共同研究を進めているファージディスプレイ法によるRANKL結合ペプチドのスクリーニングは、すでに釣れてきているRANKL結合ファージの中から、RANKL親和性の高いファージを選び、ペプチド合成を委託する。ペプチド合成後に表面プラズマ共鳴装置を用いてRANKL親和性を測定し、ファージディスプレイ法で示した親和性が再現できるか確認する。RANKL親和性が確認できた後に、RANKL逆シグナルの検討、および骨芽細胞分化促進作用の検討をすでにRANKL逆シグナルを入れ骨形成促進作用が明らかなRANKL結合ペプチドであるW9ペプチドを対照として比較する。その後、W9ペプチドに比べて骨形成促進作用が強いと示唆される新規RANKLペプチドを選び、頭蓋骨骨欠損モデルを用いてin vivoの骨形成促進作用を検討する。さらに、スクリーニングして得られた新規RANKL結合ペプチドもリポゾーム化し上記と同様なin vitroとin vivoの解析を加える。
事務手続きの関係上、次年度の使用額として計上することになった
事務手続き上のことであり、すぐに使用したいペプチドの合成費用など、消耗品費として使用する
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