研究課題/領域番号 |
25293379
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小林 真之 日本大学, 歯学部, 准教授 (00300830)
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研究分担者 |
崔 翼龍 独立行政法人理化学研究所, 分子イメージング科学研究センター, ユニットリーダー (60312229)
乾 賢 大阪大学, 人間科学部, 助教 (40324735)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レプチン / 島皮質 / 抑制性シナプス後電流 / 興奮性シナプス後電流 / セカンドメッセンジャー / PI3K / JAK2/STAT3 |
研究概要 |
本年度は,Venus蛋白発現ラットの島皮質スライス標本を用いて,興奮性ニューロンである錐体細胞(Pyr)とGABA作動性ニューロンから同時にホールセル記録を行い,興奮性シナプス後電流(uEPSC)と抑制性シナプス後電流(uIPSC)に対するレプチンの作用を調べた。GABA作動性ニューロンは,スパイク発火特性によってfast-spiking (FS)とnon-fast spiking細胞(Non-FS)に分類した。 Pyr→FS およびPyr→Non-FSにおけるuEPSCの振幅は,100 nMレプチンによって減弱した。一方, FS→PyrおよびNon-FS→Pyrで観察されるuIPSCの振幅は,いずれもレプチン灌流投与によって増大することが明らかとなった。これらのレプチンの効果は,特定の興奮性入力を受ける抑制性ニューロンの出力を強めることによって,大脳皮質局所回路における情報処理を修飾している可能性を示唆するものである。 レプチンの細胞内情報伝達経路にはphosphoinositide 3-kinase (PI3-K)とmitogen activated protein kinase (MAPK),signal transducers and activators of transcription factors 3 (STAT3)を介する3つの経路が存在する。そこで,レプチンの修飾作用がどの細胞内情報伝達経路を介して生じるかをそれぞれの阻害薬を用いて調べた。PI3KもしくはJAK2/STAT3阻害薬の存在下では,レプチンによるIPSCの増大は認められず,MAPK阻害薬とレプチンの共投与ではIPSCの増大が認められた。このことより,島皮質においてレプチンはPI3KおよびJAK2/STST3経路を介して味覚情報処理に対して抑制的に働くことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に島皮質スライス標本を用いた実験系において,レプチンのシナプス伝達に対する効果を明らかにした。さらに,そのセカンドメッセンジャーによる制御機構まで検討できたことから,初年度の実験計画は順調に進展しているといえる。また,本研究を進める上で派生した研究結果をまとめることが出来た(Yamamoto et al., J Physiol., 2013; Koyanagi et al., Anesthesiology, 2014)。
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今後の研究の推進方策 |
今後,スライス実験における研究結果を論文にまとめると共に,in vivoの実験を開始する。平成26年度は,光学計測によるレプチンの興奮伝播の制御機構を明らかにする。また,研究分担者の乾と行動生理学的実験を開始して,レプチンの異常が引き起こす味覚異常について検討する。これらの実験に目途が付いた時点でPET実験を開始する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品購入の際,値引きがあり端数が残った。 翌年度の研究費と合わせて電気生理学的実験にかかる消耗品の購入に充てる。
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