研究課題/領域番号 |
25293379
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小林 真之 日本大学, 歯学部, 准教授 (00300830)
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研究分担者 |
乾 賢 大阪大学, 人間科学部, 助教 (40324735)
崔 翼龍 独立行政法人理化学研究所, 分子イメージング科学研究センター, ユニットリーダー (60312229)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レプチン / 島皮質 / 味覚 / 局所回路 / 口腔感覚 |
研究実績の概要 |
申請者らは,膜電位感受性色素(RH1691)を用いた光学計測による味覚野を含む島皮質ニューロンの活動を解析してきた(Chen et al., 2010; Kobayashi et al., 2010; Fujita et al., 2010, 2011, 2012; Mizoguchi et al., 2011; Adachi et al., 2013; Fujita et al., 2015; Nakamura et al., 2015)。この手法を用いて,レプチンによる味覚情報処理の修飾機構をマクロ的視点から解明する実験に取り組んだ。 実験にはウレタン麻酔を施した生後7-8週のSprague-Dawleyラットを用いた。中大脳動脈と嗅溝の交点を中心とした骨窓を開け,開窓した大脳皮質に膜電位感受性色素(RH1691)を負荷し,実体顕微鏡にCCDカメラを搭載した光学計測システムを用いて神経活動を光学的に記録した。味刺激は,当初,電磁弁制御による溶液滴下装置を用いて刺激装置からのトリガー信号によって瞬間的に舌上に滴下して行ったが,得られる反応の大きさが一定せず,レプチン投与による効果を定量的に解析するには至らなかった。そこで,味覚刺激ではなく,鼓索神経刺激に切り替えて,同様の実験を行った。 その結果,レプチンの大脳皮質表面への投与によって,興奮伝播は抑制されルことが明らかとなった。また,視床からの入力を反映すると考えられる初期応答の部位についてはほとんど変化しなかった。また,島皮質味覚野相当領域を電気刺激する実験を行ったところ,レプチンによって興奮伝播が抑制された。したがって,レプチンは大脳皮質味覚野における皮質-皮質結合に対して抑制的に働くことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,レプチンの光学計測法による実験を行い,上記に示す重要な所見を得た。それは前年度の脳スライス実験の結果を支持するものであり,実験計画はおおむね順調に進展しているといえる。また,本研究を進める上で派生した研究結果を発表した(Fujita et al., Cereb. Cortex, 2015; Yamamoto et al., Neuroscience., 2015; Nakamura et al., J Comp. Neurol., 2015; Horinuki et al., J Dent. Res., 2015)。
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今後の研究の推進方策 |
レプチン遺伝子に異常があるZuckerラットは古くから肥満モデルとして知られているが,その味覚に対する応答については不明な点が極めて多い。二ノ宮らや我々の研究結果を踏まえると,治療薬としてレプチンを投与した場合,味覚に異常をきたす可能性が想定される。そこで同ラットにおける味覚嫌悪学習の特性および嗜好性の変化を行動生理学的に調べる。実験方法は,口腔内に味溶液を投与するためのカニューレを留置する手術を行い,1週間後ホームケージにてサッカリンをカニューレを通して投与する。30分後LiClを腹腔内投与して腹痛を誘発させる。通常この処置により味覚嫌悪学習が獲得され,サッカリンの摂取を避けるようになる。そこで,翌日からサッカリンを口腔内に投与し,忌避行動(ゲーピング,舌の突出など)が生じる頻度を計測する。 また平行して,スライス実験と光学計測による研究結果を論文にまとめるために,in vivo,in vitroの補足的な実験を行う。
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