研究実績の概要 |
今年度我々は,レプチン遺伝子に異常があるZuckerラットの味覚嗜好性を行動生理学的に調べた。同ラットは,古くから肥満モデルとして知られているが,その味覚に対する応答については不明な点が極めて多かった。6種類の味質(sucrose,saccharin,NaCl,HCl,QHCl,MSG)×3段階の濃度=18種類の味溶液のいずれかを蒸留水と同時に呈示し、48時間(24時間でボトルの位置を変更)の摂取量を測定した。 その結果,sucroseの摂取量がZucker rat(fa/fa)の方で少ないこと,また嗜好率やsaccharinについては差がみられないことから、味覚感受性以外の要因による差ではないかと考えられた。また,興味深い点として、低濃度(0.003 mM)のQHClで群間に大きな差が認められたことが挙げられる。 膜電位感受性色素(RH1691)を用いた光学計測による味覚野を含む島皮質ニューロンの活動を並行して解析した(Nakamura et al., 2015, 2016; Horinuki et al., 2015, 2016)。この手法を用いて,レプチンによる味覚情報処理の修飾機構をマクロ的視点から解明する実験に取り組んだ。鼓索神経刺激によって誘発される興奮伝播は,レプチンの大脳皮質表面への投与によって抑制されることを明らかにした。 この機構を明らかにするため,大脳皮質味覚野の脳スライス標本を作製し,シナプス伝達に対するレプチンの効果を調べたところ,レプチンは抑制性シナプス結合の伝達効率を減少させることが明らかになった。
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