研究課題
歯周病細菌Porphyromonas gingivalis(以下P. gingivalis)は口腔内から血管を介して全身循環に侵入し、血流性に遠隔臓器に到達して様々な全身疾患をもたらす。P.gingivalis は、歯肉上皮細胞では直ちに細胞外へ排除されるのに対し、心循環系細胞では長時間細胞内寄生することが示されている。本研究の目的は、P.gingivalisの細胞内侵入・輸送機構の細胞種による差異と全身疾患発症の特異性との関連を明らかにし、最終的に歯周病に関連した全身疾患の予防・治療に応用することである。具体的には、歯周病との関連性が指摘されている心循環系疾患、非アルコール性脂肪肝、呼吸器系疾患などの病態現場である細胞でのP.gingivalisに対する細胞内輸送の特徴を、特にメンブレントラフィック機構に注目して解析を進めた。本年度は非アルコール性脂肪肝に焦点を絞り、肝細胞でのメンブレントラフィック解析を中心に行った。具体的にはP. gingivalisをヒト肝細胞由来のHepG2細胞に取り込ませ、細胞内での生存率、細胞内局在の変化を見た。非アルコール性脂肪肝のin vitroモデルとしてオレイン酸を用いてHepG2細胞内に脂肪滴を蓄積させる実験系を構築した。オルガネラマーカーとして、初期エンドソームマーカー:EEA1、後期エンドソームおよびリソソームマーカー:LAMP2、ゴルジ体マーカー:GM130、小胞体マーカー:カルネキシンおよびBip、オートファファゴソームマーカー:LC3を用いて共焦点蛍光顕微鏡を用いて解析した。細胞内局在ではP. gingivalisは脂肪滴内には存在せず、LAMP2陽性LC3陽性のオートリソソーム内に48時間まで存在していた。さらにHepG2細胞に脂肪滴が蓄積しているとP. gingivalisのオートファジー・リソソーム経路での分解が遅延することが分かった。以上の結果より、非アルコール性脂肪肝になると歯周病細菌が細胞内での分解が遅延する可能性が示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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