研究課題/領域番号 |
25293385
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
須田 英明 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00114760)
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研究分担者 |
海老原 新 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60251534)
和達 礼子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00334441)
吉岡 俊彦 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (10635543)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | OCT / 診断 / 光学的診断 / 歯内治療 |
研究概要 |
歯科用CT(以下CBCT) を用いて3次元的骨欠損評価による垂直性歯根破折の鑑別診断を行った。垂直性歯根破折と慢性根尖性歯周炎は病態が類似しているが、確定診断が困難なことがある。その治療法は全く異なる。垂直性歯根破折は抜歯が選択され、非可逆的処置であるためにより慎重な診断が必要となる。32歯の上顎前歯・小臼歯のCBCT像の骨欠損部を3次元構築し、その体積を評価することによって、垂直歯根破折か慢性根尖性歯周炎かの鑑別診断を行った。その結果、設定したカットオフ値に対して破折の診断の感度、特異度および正答度はそれぞれ1.00、0.80および0.875であった。 新たな診断法として、光干渉断層画像装置(以下OCT)による組織表層の観察が導入された。OCTを用いた歯髄腔および根管の検出を試みた。ヒト抜去歯を用い、Er:YAGレーザーを用いて髄腔開拡を行った。あらかじめCBCTおよびmicro CT撮像を行い、歯質表面から歯髄腔までの距離を測定した。OCTで撮像し、歯髄腔観察しながらレーザーによる歯髄腔への到達が可能であった。 ヒト上顎大臼歯を用いて、近心頬側第二根管をOCTで検出可能か検討した。あらかじめgold standard とするためにmicro CT撮像を行った試料に、髄床底を肉眼・歯科用実体顕微鏡・OCTでMB2の有無を評価し、それぞれのMB2検出精度を比較した。その結果、OCTでは歯科用実体顕微鏡と同様に近心頬側第二根管を検出することができた。 ブタ下顎骨を用いて、皮質骨下の骨窩洞の観察がOCTにより可能であることを見出した。 これらの研究結果については、専門分野の国際学会で7報、国内学会で2報の報告を行った。学術論文については、1編が既にPhotomedicine and Laser surgeryに採択され、現在印刷中である。また、2編の論文を国際誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度はCBCT、歯科用実体顕微鏡およびOCTの特徴を捉えるために、各画像診断装置を用いた研究を各分担研究者および研究協力者が分かれて行った。このうち、歯科用実体顕微鏡およびCBCTはすでに臨床応用されている。そこで、OCTについての検討について重点的に検討を行った。その結果、歯内療法におけるOCTの応用するための特性を基礎的に捉えることができ、4報の国際学会での発表、2報の国内学会での報告、および1編の国際誌での論文の採択と1編の投稿に至っている。また、CBCTは3次元で組織をとらえることはできるものの、通常任意のスライスを用いた2次元画像で診断を行うものである。これは通常のレントゲン写真と比較して内部の情報を必要なスライス面で診断できるという利点があるが、立体画像を用いることによりさらに精度の高い診断が可能であると考えられる。そして3次元診断での定量的診断は歯内両方では今まで行われていなかった。そこで、CBCTで得られたデータを3次元画像構築するコンピュータグラフィックス用ソフトウェアを用いて骨欠損部の立体画像を構築した。そして骨欠損部の形態により鑑別診断を行うことが可能であった。CBCTに関しては3報の国際学会での発表を行い、1編の論文を現在国際誌へ論文投稿中である。研究初年度に各診断装置に関する特徴を基礎的に捉えることができ、多数の学会発表さらに論文作成まですでに達成した。従って、本研究課題における、これらの3つの診断装置の統合のための予備的研究を研究初年度におおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題ではCBCT、歯科用実体顕微鏡というすでに臨床応用されている装置に加えて、近年盛んに基礎研究が行われているOCTを加え、それらの画像を統合して組織表面、浅層、深層あるいは3次元像を同時にリアルタイムで確認し、診断、治療に役立てることにある。そこで、研究初年度はOCTに関する検討を重点的に行った。OCTの特性を理解したといえる本研究課題第2年度は当初の申請通りの以下について検討を行う。 ヒト抜去歯を用いる。歯科用材料の中で、イ)MSで色調が判別可能である、ロ)OCT画像上に認識可能である、ハ)レントゲン造影性を有しながらもアーチファクトを起こしにくい、等の条件を有する材料を決定し、MS・OCT・CBCTでの各画像を採取し、基準点が判別できることを確認する。さらに、試料はマイクロCTを用いて観察し、基準画像とする。基準画像を元に、MS・OCT・CBCTの画像の較正を行う。これにより、各計測装置で認識可能な基準点を対象組織に設定する。 上記で確立された手法を用い、ヒト抜去歯のMS・CBCT・OCTの各画像を得る。その後、3次元コンピュータグラフィックス用ソフトウェアを用いて、3次元画像を構築する。各画像をそれぞれマッピングする。基準点の座標位置の確認を行う。 ヒト抜去歯を用い、基準点を元に各画像に同一の座標軸を与えた後、各画像の重ね合わせを行う。基準点は3点必要であると考えている。基準画像であるマイクロCT画像を元に、各画像の較正を検討する。その後、ヒト顎骨を用いて同様の画像の重ね合わせを行う。 組織表面(MS)~組織表面・浅層(OCT)~組織深層(CBCT)を同時に観察することで、3次元的診断が精確に達成されることになる。さらに臨床応用するために、MS画像にOCT・CBCT像が同期して、モニター上に表示されるように設定を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究経費を有効に使用するべく、購入物品、消耗品を計画的に購入して研究を行った。その結果、当初の予定より、支出額が減少した。また、昨年度は国際学会が日本で開催されたために、発表を行うが旅費としての支出が少なかった。そのため、研究は概ね順調に進行していると評価できるが次年度使用額が生じた状態である。 研究第2年度は、さらに研究を推進するために、研究協力者(大学院生)の増員を予定している。そのため、物品費の増加が見込まれる。 さらに、すでに、海外における国際学会での発表の予定が組まれている。今後も、発表の機会が増えると予想されるために、次年度使用額を旅費にも充当する予定である。
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