研究課題/領域番号 |
25293386
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
川島 伸之 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60272605)
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研究分担者 |
関矢 一郎 東京医科歯科大学, 再生医療医療研究センター, 教授 (10345291)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯髄幹細胞 / 間葉系幹細胞 / 細胞分化 / 三次元培養 / インテグリン / 骨再生 / 象牙質再生 |
研究実績の概要 |
未分化間葉系幹細胞である歯髄幹細胞は、間葉系マーカーを発現しており、多分化能を有することが特徴であり、臨床における再生医療の有力なソースとして期待されている。しかし、歯髄組織から効率よく歯髄幹細胞を分離するための手法はいまだ確立されていない。STRO-1といった典型的な間葉系幹細胞の表面抗原に対するFACSを用いての回収では、回収された細胞の幹細胞としての特性は優れていると報告されているが、回収効率が悪いのが大きな問題である。今回、歯髄組織から効率的に歯髄幹細胞を分離回収するために、間接滑膜由来の間葉系幹細胞の分離システムを応用し、歯髄組織からコラゲナーゼ、ストローメライシンにより個々の細胞に分離した歯髄細胞を適度な濃度で培養し、コロニーを形成した細胞を回収し、歯髄幹細胞として実験に供した。本システムを使用することで、単一な細胞集団ではなくヘテロな細胞集団であるものの、比較的多くの幹細胞を分離することが可能である。しかし、分離した歯髄幹細胞をP0あるいはP1で臨床に使用するには細胞数が少なすぎる。そのため、歯髄幹細胞を何代か継代培養する必要がある。しかし、継代培養の条件について十分な検討はされていない。今回、歯髄幹細胞の培養条件を疎あるいは密にし、歯髄幹細胞特性に与える影響について検討する。また、歯髄幹細胞以外に、口腔内において容易に採取できる組織として、歯肉組織がある。歯肉組織に含まれる歯肉幹細胞を分離し、歯髄幹細胞と比較することで、歯髄幹細胞以外口腔内における幹細胞の特性を把握し、またその臨床での使用の可否について検討する。さらに、臨床における移植を考える際にスフェロイド培養した歯髄幹細胞を局所に移植することで、コラーゲン等のスキャフォールドを使用することなく移植することが可能である。スフェロイド培養した歯髄幹細胞の特性についても検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯髄組織から歯髄幹細胞を分離するにあたり、間接滑膜由来の幹細胞を分離する手法に準じて分離を行い、間葉系幹細胞マーカーの発現が高い分画を得ることができた。これらの細胞を分化誘導したところ、骨、軟骨、神経への分化誘導が可能であった。特に、三次元スフェロイド培養した歯髄幹細胞は石灰化Nodule形成を顕著に示し、骨芽細胞マーカーを高発現していた。すなわち、歯髄幹細胞は、硬組織形成細胞への分化能が高い細胞であり、臨床において骨、象牙質といった硬組織再生が必要な場における再生医療のソースとして有用であると推測される。実際、SCIDマウス頭蓋に形成した骨欠損に移植したところ、骨様の硬組織形成が確認された。しかし、歯髄組織の再生において、非石灰化組織である歯髄組織を誘導するためには、石灰化を制御する必要がある。コラーゲン内にて培養した歯髄幹細胞は、骨芽細胞マーカーの発現が概して低発現だったことから、コラーゲンをスキャフォールドとして使用することで、非石灰化組織である歯髄組織の再生を図ることが可能ではないかと推察される。
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今後の研究の推進方策 |
歯髄幹細胞を再生医療に使用するにあたり、十分な細胞数を得る必要がある。しかし、臨床において得られる歯髄組織量は限られており、再生医療に必要な歯髄幹細胞を準備するためには、細胞培養にて増殖を図ることが必須となる。しかし、細胞培養条件が歯髄幹細胞特性に与える影響については十分に解明されていない。間葉系幹細胞を幹細胞特性を維持したまま培養する条件として、疎な状況での培養が推奨されている。しかし、効率的に細胞を培養するには、サブコンフルエントの状況まで細胞数を増やしたうえでのパッセージが一般的である。細胞の播種条件が歯髄幹細胞特性に与える影響を調べる目的で、歯髄幹細胞を疎な状況に播種した場合と、密な状況に播種した場合において、細胞増殖、間葉系幹細胞マーカー発現、骨・軟骨・神経分化能についての影響を検討する。 さらに、抜去歯が得られなかった場合を想定し、歯髄組織以外の幹細胞のソースとして、歯肉組織をターゲットにする。歯肉組織から歯髄幹細胞と同様の手法を用いて幹細胞が採取できることは確認済だが、歯肉幹細胞の特性について、歯髄幹細胞と比較し、臨床応用の可能性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初NOD/SCIDマウスおよびマイクロミニピッグの実験を予定していたが、歯髄幹細胞の特性解析に時間がかかり、ほとんど使用できなかった。そのため、当初予定していた経費と実際の使用額の間に乖離が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞の機能解析は順調にすすんでいる。当初の予定通り、NOD/SCIDマウスおよびマイクロミニピッグを用いた動物実験を行う予定である。
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