研究課題/領域番号 |
25293387
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 美加子 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (40271027)
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研究分担者 |
岩見 行晃 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 招聘教員 (90303982)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯学 / 象牙質 / 紫外線 / 架橋 / コラーゲン / 機械的強度 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、前年度に確認した加熱、紫外線および架橋材の複合効果による象牙質の強化メカニズムについて、特に象牙質タイプIコラーゲンの分子レベルでの化学変化に着目して強化メカニズムを検討した。 顕微レー ザーラマン分光分析では、象牙質薄切切片を脱灰し、365nm紫外線照射15分および架橋材(0.1%リボフラビンに10分浸漬)処理を行ったものを試料とした。試料は、顕微レー ザーラマン分光分析装置(RAMAN-11, ナノフォトン)にて、レーザー 波長785nmで紫外線照射による化学変化の測定に供したところ、アミドIおよびII比の変化ならびにプロリンのイミド環の炭素に相当する部位に、波長の明らかな増幅が認められた。 核磁気共鳴を用いた象牙質タイプIコラーゲンの原子構造変化の分析では、象牙質試料を脱灰後、液体窒素にて凍結粉砕処理したコラーゲン 試料を、上述と同様の紫外線ならびに架橋処理に供した。試料を重水に温度 40°C、pH7.0 の 条件で溶解させ、核磁気共鳴装置(JNM-AL300,JEOL)にて処理前後の炭素原子の変化を分析したところ、C=OおよびCH2の結合部位に波長の増幅を認め、新たな分子間結合の創生が示唆する結果が得られた。 スピン共鳴法によるラジカル発生の検討では、象牙質コラーゲンの代表的アミノ酸からなるプロリンとグリシンを試料として用いた。その結果、ペプチドへの紫外線照射によりOHラジカルのみならずCOOラジカルも同時に発生しており、これらが、象牙質コラーゲンに紫外線照射による架橋形成に関わっていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、象牙質を強化する方法として加熱・紫外線および架橋剤による複合効果を検証した。その結果、紫外線照射時には60℃程度の発熱が認められ、紫外線照射によって自動的に加熱の複合効果が得られることがわかった。さらに、紫外線と架橋材との併用効果を調べる上で、当初に計画していたアルデヒド系のカルボジイミドと比較して、生体親和性の高いリボフラビンを光増感剤を代用できることを発見した。そして、紫外線照射およびリボフラビン併用による象牙質の増強効果を確認することができた。 さらに、分子レベルでの化学変化メカニズムを、ラマン分光分析、核磁気共鳴法、およびスピン共鳴法にて複合的に解析したところ、紫外線により励起されたラジカルにより、プロリンのC=O結合変化を基軸に新たな分子間結合の創生が起こっていることを確認した。 以上の成果により、予定していた実験計画はおおむね順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の今年度は、紫外線による架橋形成について、SDS-Pageおよび高倍率透過型電子顕微鏡観察を実施し、分子間架橋の形成を視認することを計画している。 さらに、紫外線処理した象牙質のレジン系材料への非着体としての性質を、ナノインデンテーションならびに微小引張り試験にて検証する。 以上により、物理・化学複合処理による象牙質の強化法について総括したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定した物品費について、66,837円分少なく決済されたため、次年度に繰越すものとした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越す66,837円については、H27年度の物品に加算して使用する計画である。
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