研究課題/領域番号 |
25293388
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
前田 英史 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (10284514)
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研究分担者 |
和田 尚久 九州大学, 大学病院, 教授 (60380466)
友清 淳 九州大学, 大学病院, 講師 (20507777)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 4-META-MMA-TBBレジン / ナノハイドロキシアパタイト / ヒト歯根膜幹細胞株 / 硬組織形成 |
研究実績の概要 |
昨年度、ナノハイドロキシアパタイト添加型4-META-MMA-TBBレジン(nHA/4MMT)の歯質接着性が、コントロールの無添加型(4MMT)とほぼ同等であるが、歯根膜関連遺伝子の発現を促進する働きがあることを示した。この結果に基づいて、今年度は、サーマルサイクル下(摂氏5度と55度の水中に20秒間の浸漬を5000回繰り返し)で、このnHA/4MMTの歯質接着試験を行った結果、実験前と殆ど低下はなく、4MMTとほぼ同等の接着性を維持していることを明らかにした。またこれは、カルシウムの添加群では明らかに低下を示したのに対して、ナノハイドロキシアパタイトの添加は、接着に影響を及ぼさないことを示したものだった。 次に、ハイドロキシアパタイトの円柱(径1mm; 高さ2mm)を作製し、その周囲を、当研究室で作製した、2種類のヒト歯根膜幹細胞株(1-11細胞株および1-17細胞株)の細胞シートで覆い、一晩培養後、ラット頸骨の骨窩洞内に4週間埋入した。その結果、細胞シートを巻いた群では、いずれもアパタイト周囲に硬組織が形成されたのに対し、アパタイト単独では、同様の結果が得られなかった。さらに新しく形成された硬組織周囲には線維組織が認められたが、これらはヒトビメンチン抗体に陽性反応を示した。これらの結果より、ハイドロキシアパタイトは、歯根膜幹細胞株による硬組織形成の有効な足場材であることが明らかになった。さらに、4MMTにて同様に円柱を作製し、同じ骨窩洞内に4週間埋入した結果、周囲に骨様組織が断片的に形成されることが明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
nHA/4MMTのサーマルサイクル試験および、ラット頸骨内への埋入実験より、概ね想定していた結果が得られている。またハイドロキシアパタイトと歯根膜細胞シートとの、生体内への移植よって、硬組織形成が促されることを明らかにできた。次の課題である、生体内で歯根膜組織再生検討のための、顎骨内への埋入実験は技術的な壁があり、やや遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
nHA/4MMTの歯質接着性の有効性が示され、またハイドロキシアパタイトとヒト歯根膜幹細胞との相互作用によって、硬組織形成が誘導されたことから、nHA/4MMT周囲に幹細胞シートを巻いたものを、骨窩洞内に埋入して、その有用性を確認する。その際、これまでの当研究室からの報告で、Activin AならびにWnt5aは、歯根膜細胞および骨芽細胞に対して、異なる作用を示し、歯根膜組織の治癒に効果を持つ可能性が示唆されたことから、これらの因子を用いて、細胞を刺激し、歯根膜組織形成能について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子導入装置を購入する予定であったが、導入効率や、材料と培養した細胞への遺伝子導入には適切ではないと判断し購入を控えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
足場材上で培養した細胞に遺伝子導入するためには、試薬が多量に必要であることからLipofectamine系の試薬を繰り返し用いることで補う予定である。
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