研究課題/領域番号 |
25293395
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30379078)
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研究分担者 |
矢谷 博文 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80174530)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 小分子化合物 / 再生歯学 / 骨再生 |
研究実績の概要 |
補綴歯科治療において、広範な歯槽骨の欠損を補うためには、従来の歯科補綴学的手法に加え、骨誘導能をもつ細胞の移植を基盤とした新たな治療法を開発することが望まれる。iPS細胞はその分化万能性ゆえに、移植後に腫瘍化することが大きな問題となっている。本研究の目的は、ケミカルバイオロジーのアプローチによって、数ある生理活性化合物の中からiPS細胞の腫瘍化抑制作用および骨芽細胞分化促進作用を併せもつ化合物を同定し、その作用機序を解析することである。本年度は、LOPAC化合物ライブラリーおよび数種類の骨芽細胞分化促進化合物を用いて、マウスiPS細胞の石灰化促進作用を有する化合物のスクリーニングを行った。その結果、当初の予想よりも多くのヒット化合物(harmine、resveratrol、phenamil、HMG-CoA還元酵素阻害剤、リン酸化酵素阻害剤等)が得られた。また、iPS細胞を骨芽細胞へ分化誘導する際に、これらの化合物が実際に骨芽細胞分化マーカー遺伝子の発現を促進することをRT-PCR解析を用いて確認した。さらに、いくつかのヒット化合物では、iPS細胞の骨芽細胞分化を強力に促進すると同時に多くの細胞が培養プレートから剥離していく現象が観察された。また、これらヒット化合物を試験管内でiPS細胞へ作用させ、細胞毒性試験を行った結果、これら化合物がiPS細胞の細胞増殖能および細胞死を制御している可能性を示す知見を得た。これらの研究成果は、化合物を利用した簡便なiPS細胞の腫瘍化抑制技術による歯槽骨増生技術に繋がる可能性があり、今後の研究の発展が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に目的の作用を有するいくつかの化合物を見出していることは、研究目的の達成に向けて順調であることを示している。予定よりも多くのヒット化合物がみつかっているため、追加実験により本年度の計画を半年間延長する必要が生じている状況ではあるが、この追加実験が当初予定していた二次スクリーニングに置き換わる可能性が高いため、最終的には期間内の研究目的の達成は可能と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られたヒット化合物について、当初の予定に加えてiPS細胞の骨芽細胞分化促進作用の評価を詳細に行うとともに、細胞死に及ぼす影響を蛍光観察等の実験手技を用いて明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
化合物スクリーニング実験の結果、平成25年12月に当初の予想よりも多くのヒット化合物が得られたことに加え、いくつかのヒット化合物が細胞の生死を制御している可能性を示す新たな知見を得た。研究の遂行上、すべてのヒット化合物について評価を追加したうえで、蛍光観察等の追加の研究方式を決定することとなったため、次年度に必要な経費について繰越する。
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次年度使用額の使用計画 |
追加実験の後半(平成26年4月~6月)には、追加実験に要する機器(蛍光観察顕微鏡、液体窒素保存容器等)の購入が必要となるが、研究代表者が平成26年4月に東北大学に異動となるため、研究計画の遂行上、これらの器機は異動先で購入する。
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