研究課題
本研究の目的は、ケミカルバイオロジーのアプローチによって、iPS細胞の腫瘍化抑制作用および骨芽細胞分化促進作用を併せもつ化合物を同定し、その作用機序を解析することである。前年度までに、骨芽細胞の分化を促進する化合物をスクリーニングし、ヒット化合物の中でスタチン系薬剤が細胞の生死を制御している可能性を示す知見を得た。また、iPS細胞を移植体として用いるために、試験管内でiPS細胞から三次元骨様細胞構造体を誘導することに成功した。この細胞構造体をスタチン化合物を用いて培養した結果、腫瘍化せずに異所性の骨形成を示した。さらに、免疫不全ラットの頭蓋骨に形成した欠損部に、シンバスタチン存在下で骨芽細胞へ分化誘導したiPS細胞を移植すると、腫瘍化することなく骨再生を促進した。本年度は、シンバスタチンにおける腫瘍化形成抑制の機序解明に向け、これら化合物がiPS細胞の分化過程におけるアポトーシスに及ぼす影響を中心に分子生物学的な検討を行った。骨芽細胞への分化誘導過程で、シンバスタチンはSSEA-1陽性を示す未分化iPS細胞の細胞数を濃度依存的に減少させる一方で、SSEA-1陰性を示す細胞におけるOsteocalcin遺伝子の発現を濃度依存的に有意に促進した。また、シンバスタチンは、SSEA-1陽性細胞のCaspase3/7の活性およびミトコンドリア膜電位の消失を促進し、AnnexinV陽性アポトーシス細胞の割合を有意に増加させた。以上の結果より、シンバスタチンはマウスiPS細胞の骨芽細胞分化誘導過程で、骨芽細胞への分化を促進するとともに未分化なiPS細胞をアポトーシスに誘導する可能性が示唆された。また、シンバスタチンを用いて作製したiPS細胞構造体は、移植先における腫瘍形成を抑制しながら骨欠損部の再生を可能にする可能性が示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Stem Cells Int
巻: Article ID 6240794 ページ: 1-11
doi.org/10.1155/2016/6240794
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