研究課題/領域番号 |
25293400
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高田 雄京 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (10206766)
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研究分担者 |
清水 良央 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30302152)
泉田 明男 東北大学, 大学病院, 助教 (40333827)
高橋 正敏 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50400255)
天雲 太一 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80451425)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | チタン合金 / マグネシウム / 固溶体 / 気固反応 / 骨誘導 / ALP / インプラント |
研究実績の概要 |
本研究課題は、骨形成初期に必要不可欠なマグネシウムをトリガーとして生体組織を刺激し、長期の生体環境に応じた骨形成の誘導を促すインプラントに最適なバイオレスポンス型Ti-Mg合金の開発とその応用を試みることである。 昨年度は、基材であるTi-Mg固溶体相を気固反応により作製することを目的とした。気固反応の温度(850~1100℃)により、マグネシウムの蒸気圧を制御し、チタン表面からマグネシウム蒸気を拡散させてTi-Mg固溶相の形成を試みたが、チタン箔で包んだマグネシウムが融解することで石英管に接触し、石英管に亀裂等が発生してチタン表面に十分にマグネシウムの拡散が生じなかった。 本年度は、内径8mmの石英管にくびれを付け、基材となるチタン板の試料室とマグネシウム蒸気発生室の2室に加工し、チタン箔で包んだ溶融マグネシウムがこぼれ出ないように設計した。また、気固反応を行う加熱装置として、高真空排気装置を装着した高真空電気炉を専用加熱装置として作製した。一旦、電気炉内を真空(1×10-2Pa以下)にし、石英管内のマグネシウム蒸気圧と同等になるように高真空電気炉内のアルゴンガス分圧を減圧弁で制御し、石英管が破損した場合でもマグネシウム蒸気が大気中に拡散しない安全装置も作製した。本年度は、実験室の移設等があり、実験装置を稼動できない期間があったため、試料作製のための機材の作製を中心に行い、次年度の実験遂行を加速できるよう準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
マグネシウム蒸気による気固反応を利用し、Ti-Mg固溶体をチタン表面に生成する過程において、反応容器に亀裂が入り、気固反応に必要なマグネシウムの蒸気圧を得ることができなかった。そこで、本年度は溶融マグネシウムがこぼれ出ることなく、蒸気のみを効果的に排出できる2室式の石英ガラス容器を設計した。また、気固反応を行う加熱装置として、高真空排気装置を装着した高真空電気炉も専用加熱装置として作製した。しかし、本年度は仮設の実験室での作業となり、また年度後半に実験室の移設があったため、実験装置を稼動できない期間が多く、ガラス加工や高真空電気炉などの製作にほとんどの時間を費やしたため、計画に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
内径8mmの石英管にくびれを付け、試料室とマグネシウム蒸気発生室の2室に加工した反応容器が試作できており、気固反応の温度を制御することによって目的のマグネシウム蒸気圧を得ることができるようになった。また、安全性を担保した高真空電気炉を専用加熱装置として作製できているため、定常的にTi-Mg固溶体を作製できるようになり、Ti-Mg固溶体の材料学的評価実験を遂行する予定である。同時に、チタンのアルカリ処理を応用し、チタン表面に多孔質のチタン酸マグネシウム皮膜を形成する実験も行い、固溶体との性状比較を行う計画である。細胞培養等の実験においては、Ti-Mg合金の安全性評価とマグネシウムイオンの骨誘導評価を遂行予定であり、計画に近い遂行ができているため、研究の遅れを解消できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
溶融マグネシウムと石英管の接触が反応容器に亀裂および破壊を生じさせ、Ti-Mg固溶体を得ることができなかったが、その対策として、本年度に試料室とマグネシウム蒸気発生室の2室に加工した反応容器を作製し、同時に安全性を担保した気固反応用の加熱装置も作製することができた。今年度予定した計画の一部(Ti-Mg合金の材料学的評価実験及び耐食性、Ti-Mg固溶体合金のマグネシウムイオン徐放効果)を遂行できなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
新たに開発した反応容器を量産するための石英ガラス管や時間不足で遂行できなかったTi-Mg合金の材料学的評価実験(Ti-Mg合金の機械的性質及び耐食性)を評価する。最も重要なマグネシウムイオンの徐放は、ICPによるマグネシウムイオンの定量分析を行い、Ti-Mg固溶体合金のマグネシウムイオン徐放効果を確認する。また、チタン表面に多孔質のチタン酸マグネシウム皮膜を形成する実験も行うため、以上の実験に次年度使用額を使用する。
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