研究課題/領域番号 |
25293401
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
波多 賢二 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (80444496)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 軟骨細胞 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
平成27年度はエピジェネテクス制御機構の一つであるDNAメチル化に注目し、軟骨細胞分化におけるDNAメチル化変動遺伝子の検討を行った。ヒト軟骨細胞と皮膚線維芽細胞をLONZA社より購入しゲノムDNAを回収した。EZ DNA Methylation Kit (ZYMO RESEARCH社)を用いて、バイサルファイト変換し、DNA増幅、断片化を行った後、HumanMethylation450 BeadChipにハイブリダイゼーションさせ、45万以上のメチル化サイトのゲノムワイドな検索を行った。その結果、軟骨細胞においてDNAメチル化が亢進しているCpGサイトが31769か所、DNAメチル化が低下しているCpGサイトが47682か所存在していた。DNAメチル化の変化が遺伝子発現の変化とリンクするか否かを検討するために同じ皮膚線維芽細胞および軟骨細胞からRNAを採取し、マイクロアレイ解析を行い、DNAメチル化解析との統合解析を行った。その結果、軟骨細胞において遺伝子発現が増加し、DNAメチル化が低下している遺伝子上流1000bp以内のCpGサイトを7410個同定した。これらCpGサイト近傍の遺伝子にはSox9、Col2a1、アグリカンなど軟骨細胞のマーカー遺伝子も含まれており、軟骨細胞のエピジェネティクス制御に関与する遺伝子のクローニングが行われたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は軟骨細胞と皮膚線維芽細胞のDNAメチル化解析および遺伝子発現解析を行い、これらの結果を統合的に解析することにより、軟骨細胞分化のエピジェティック制御に関与する遺伝子の同定が可能となった。したがって、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、DNAメチル化-遺伝子発現の統合解析によって明らかとなった遺伝子の中から、軟骨細胞分化を制御する転写因子の候補遺伝子を絞り込み、その機能解析を行っていく予定である。まず、胎生期マウス成長板軟骨における候補遺伝子の発現を、免疫染色法ならびにIn Situ Hybridization法により検討する。候補遺伝子の機能的役割の解明には、マウス軟骨細胞様細胞株ATDC5細胞および初代培養軟骨細胞に候補遺伝子をアデノウィルスシステムにより過剰発現させ、軟骨細胞分化マーカー遺伝子(Col2a1,Aggrecan)の発現変化をRT-qPCR法により行う。さらにsiRNAを用いたノックダウンによる効果も検討する。クローニングされた遺伝子が軟骨組織再生を促進するか否かを検討するために、候補遺伝子を過剰発現させた間葉系幹細胞をコラーゲンゲルに埋め込み、ヌードマウス皮下に移植し軟骨組織形成能を検討する。軟骨組織再生の効果は、HE染色病理組織切片、In Situ ハイブリダイゼーション(Ⅱ型コラーゲン、アグリカンなど)およびリアルタイムPCR法により検討する。可能であれば、軟骨組織欠損動物モデルへの応用も試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は培養が困難と思われたヒト軟骨細胞およびヒト皮膚線維芽細胞の増殖が順調であったため、専用培地や成長因子の購入が予定より少ない金額に抑えられ、次年度繰越金が生じた
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の遺伝子発現解析に用いる試薬に使用する予定である
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