研究課題/領域番号 |
25293404
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
加藤 功一 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (50283875)
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研究分担者 |
中路 正 富山大学, 先端ライフサイエンス拠点, 特命助教 (10543217)
谷本 幸太郎 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (20322240)
平田 伊佐雄 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (40346507)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 繊維軟骨 / 硝子軟骨 / 間葉系幹細胞 / 足場材料 / キメラタンパク質 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
本研究は顎関節軟骨の再生治療を目標とする。顎関節軟骨は基底部の硝子軟骨および関節摺動面の繊維軟骨からなる複合組織であり、その構造が機能発現の鍵を握る。顎関節症に伴う損傷軟骨の再建には間葉系幹細胞(MSC)を用いた再生治療が有効であると期待されているが、硝子軟骨/繊維軟骨からなる層構造を再建することは難しい。そこで本研究では、まず、MSCから線維軟骨・硝子軟骨への効率のよい分化条件を探索した。 昨年度までに、TGF-beta3およびIGF-1による刺激が、とくに繊維軟骨様組織の形成に効果的であることがわかった。しかし、硝子軟骨の分化については有効な増殖因子を見出されていない。そこで本年度はとくに、MSCから硝子軟骨形成細胞の分化誘導条件の最適化に取り組んだ。 不死化ヒトMSCを用いてペレット培養を行った。培地中に種々の増殖因子を添加した。4週間の培養後、とくにⅡ型コラーゲンとⅠ型コラーゲンの遺伝子発現比を指標として硝子軟骨への分化を判定した。また、硝子軟骨への分化を更に促進するため、細胞外マトリックスの一種であるⅠ型あるいはⅡ型コラーゲンを培地に添加してそれらの効果を調べた。 以上の検討の結果、TGF-beta3とIGF-1を組み合わせて添加することによって硝子軟骨細胞が比較的高い割合で分化することがわかった。さらに、Ⅱ型コラーゲンの添加によって分化効率は上昇した。以上のように、MSCから硝子軟骨を形成する細胞の誘導に効果的と考えられるタンパク質性因子を同定することができた。 また本研究では、繊維・硝子軟骨の誘導に効果的な細胞増殖因子を生体分解性高分子からなる足場材料内に安定に担持するため、足場材料結合性ペプチドと増殖因子とのキメラ蛋白質の合成に取組んだ。これまでにBMP-2キメラ蛋白質の合成が完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
硝子軟骨の分化誘導に適した増殖因子を見出すまで、予想以上の時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
細胞増殖因子と生分解性高分子結合性ペプチドとのキメラタンパク質を合成し、生分解性多孔質足場材料へ担持する。足場材料の素材として脂肪族ポリエステル共重合体に着目し、適切な空隙をもつ多孔質体の作製法を確立する。その際、3次元造形技術の組み合わせを検討する。次に、生体の顎関節軟骨に見られるような複合化組織構造を再現するため、硝子軟骨誘導条件(多孔質構造および誘導因子に基づく)と繊維性軟骨誘導条件を異なる領域に配置させた人工細胞外マトリックスを構築し、その評価を行う。
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