研究課題/領域番号 |
25293405
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山座 孝義 九州大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (80304814)
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研究分担者 |
山座 治義 九州大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (30336151)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乳歯幹細胞 / 口唇口蓋裂 |
研究実績の概要 |
口唇口蓋裂患者由来の乳歯幹細胞(cleft-lip and palate patients-derived stem cells from human exfoliated deciduous teeth; CLP-SHED)と正常乳歯幹細胞(healthy donors-derived stem cells from human exfoliated deciduous teeth; SHED)と比較して、transforming growth factor receptor下流の細胞内シグナル分子Smad2/3, p38, ERK1/2, JNK, Akt, mTORおよびそれらリン酸か分子の発現に関する比較検討をreverse transcription polymerase chainreaction(RT-PCR)法およびウェスタンブロティング法で解析した。CLP-SHEDおよびSHEDにおいてこれらの発現が優位に上昇しているシグナル分子、低下シグナル分子、また変化が認められないシグナル分子が検知された。 次に、リン酸化レベルが変化した分子群についてさらに検討を加えた。各siRNAならびにインヒビタ-・アクチベーターを骨誘導培養中に作用させ、誘導後1週後で総RNA及び総タンパクを抽出し、RT-PCR法およびウェスタンブロティング法にて、骨芽細胞特異的遺伝子ならびに蛋白質の発現を解析した。また、誘導後4週後でアリザリンレッド染色を行い、石灰化物沈着能を解析した。解析した一部のシグナル分子では、骨形成に変化が認められなかった。残りの分子群については、シークエンスを行い、遺伝子配列の異常は認められなかった。また、DNAメチル化解析およびクロマチン免疫沈降法で解析した所、これらの解析に於いても異常は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RT-PCR法およびウェスタンブロティング法を用いて、本年度の最大の目標である正常乳歯幹細胞(healthy donors-derived stem cells from human exfoliated deciduous teeth; SHED)との比較実験ににより、口唇口蓋裂患者由来の乳歯幹細胞(cleft-lip and palate patients-derived stem cells from human exfoliated deciduous teeth; CLP-SHED)における異常細胞内シグナルを判明した。さらに、遺伝子レベルでのこれら分子の異常が認められなかった事は、本患者の臨床的履歴(非遺伝性非症候群性)と一致する結果であり、ヒトに於ける口唇口蓋裂発症の候補分子となりうる発見と考えられる。 また、siRNA・インヒビタ-・アクチベーターを用いることで、CLP-SHEDにおける骨形成不全機能の一部を回復させる手段となる足がかりをも発見した。この事実は、将来、臨床応用を見据えた場合、非常に重要な発見となった。 以上のことから。本年度の研究は、概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
発見した口唇口蓋裂患者由来の乳歯幹細胞(cleft-lip and palate patients-derived stem cells from human exfoliated deciduous teeth; CLP-SHED)における異常細胞内シグナルと骨形成の関係をさらに追求する。 また、この発症分子メカニズムを利用して、まずは、培養系にて。CLP-SHEDにおいて機能不全を示した骨形成能の改善を目指して行く計画である。siRNAならびにリン酸化に対するインヒビタ-・アクチベーター添加後の骨誘導実験系に於けるより詳細な骨形成改善メカニズムをRT-PCR法およびウェスタンブロティング法を用いて追求する。 また、免疫不全マウス頭頂部に、骨欠損モデルを作製し、骨再生を目指す。その欠損部に、種々のキャリアーとともに正常SHED、CLP-SHED、siRNA・インヒビタ-・アクチベーター処理CLP-SHEDを移植する。移植部をマイクロCT等で経時的に観察し、その骨の再生・治癒課程を観察すると供に、移植後8~16週後に於いて当該部組織切片を作製して、治癒像を詳細に観察する。 以上のin vitroならびにin vivoの骨再生の実験を通じて、CLP-SHEDの機能的改善手段の構築を確立し、将来の臨床応用へと目指してゆく。さらに、本年度ども含めた研究成果を論文にまとめ、国際雑誌に発表するよう努力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行上、次年度への抗体購入に充てる必要があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
in vivo の骨再生を検討するため、移植細胞の局在を示す解析(免疫染色)に使用予定である。
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