研究実績の概要 |
口唇口蓋裂患者3名より脱落乳歯を採取し、それら残存歯髄より間葉系幹細胞の亜群を単離した。口唇口蓋裂由来脱落乳歯幹細胞cleft-lip palate-derived stem cells from human exfoliated deciduous teeth (CL/P-SHED)と名付けた。健常児3名より採取・単離した脱落乳歯幹細胞をcontrol stem cells from human exfoliated deciduous teeth (Control-SHED)とその性状を比較検討した。本年度は昨年度よりより詳細にCL/P-SHEDとControl-SHEDとの間における細胞内シグナルの違いをWestern blotting法にて解析した。標的シグナル分子として、Smad2/3, p38, ERK1/2, JNK, Akt, mTOR, NF-κbならびにそれらのリン酸化分子とした。これらシグナル分子の中で特にERK1/2のリン酸化が、Control-SHEDと比較してCL/P-SHEDにおいて非常に亢進していた。次に、ERK1/2の上流のMEKならびにそのリン酸化MEKをWestern blotting法にて解析したが、その発現に両者の差異は認められなかった。さらに、リン酸化ERK1/2の脱リン酸化を促すDUSP群の発現について、qRT-PCR法およびWestern blotting法で検査した所、CL/P-SHEDにてDUSP4/5/6が低発現を認めた。 ERK1/2インヒビターならびにERK1/2 siRNAを作用させ、CL/P-SHEDにおけるin vitro骨形成能力の回復を検討した。ERK1/2インヒビターCL/P-SHED群ならびにERK1/2 siRNA処理CL/P-SHED群では、ともにControl-SHED と同等のin vitroでの骨形成能力への回復が認められた。またこの群では、骨芽細胞特異的分子のRunx2やオステオカルシンが遺伝子ならびにタンパクレベルでの回復もqRT-PCR法およびWestern blotting法で確認された。DUSP4/5/6遺伝子のシークエンスの結果、CL/P-SHEDでは、DUSP4/5/6 DNAの遺伝学的変異が認められない事が分かっており、今後はDUSP4/5/6遺伝子のプロモーター領域におけるDNAメチル化やヒストン修飾について検討を考えている。
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