研究課題/領域番号 |
25293408
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
日比 英晴 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90345885)
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研究分担者 |
黒田 健介 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (00283408)
片桐 渉 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (10437030)
土屋 周平 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20569785)
山本 朗仁 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50244083)
服部 宇 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60332699)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 再生医学 |
研究実績の概要 |
本研究の全体構想は幹細胞培養上清の適用法を工夫することにより,延長装置を用いることなく,骨延長に匹敵する大量の骨再生を可能にし,これにより顎骨区域欠損の再建を目指すものである. これまでに培養上清に含まれている成分は成長因子,サイトカイン,細胞外マトリックスであることが明らかにされている.われわれは骨髄間質細胞および脱落乳歯歯髄幹細胞を細胞種とし,その培養上清成分を詳細に解析してきた.その結果,両者ともそれぞれ微量ながら多種類のものを含んでおり,それらがバランスよく作用して組織を再生させることがわかってきた.本来,組織再生は多段階の過程を経るものであり,適切なサイトカインの組み合わせが適時適所に作用すべきである.また再生の場には何よりも血行を確保すべきである.これまでに培養上清が血管内皮細胞,間葉系幹細胞の遊走を促進し,単独因子よりもその効果が高いことを確認した. 本年度までにこの培養上清をビスフォスフォネート製剤由来の顎骨壊死モデル,歯周病による骨欠損モデルに適用し,それぞれの抑制効果,修復効果を確認した.またチタン製インプラント表面に培養上清成分を付着させることにより,その周囲に生じる骨形成を促進することも確認した.これらのことから骨髄間質細胞および脱落乳歯歯髄幹細胞由来の培養上清は,硬組織欠損部に直接的に投与する方法ばかりではなく,人工材料に付着させて間接的に適用する方法も有効であることが明らかにされた.またプラズマ照射により表面加工処理を施すことによりチタン表面への培養上清成分の親和性が高まり,それによりチタンインプラント周囲に著しい骨化促進効果が得られているので,この表面処理法をチタンプレートおよびメッシュに施すことで,また上記のファイバーと組み合わせることで,これらが顎骨区域欠損部でも骨形成を期待し得る再建材料となる可能性についても検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに培養上清に含まれている成分は成長因子,サイトカイン,細胞外マトリックスであることが明らかにされている.われわれは骨髄間質細胞および脱落乳歯歯髄幹細胞を細胞種とし,その培養上清成分を詳細に解析してきた.その結果,両者ともそれぞれ微量ながら多種類のものを含んでおり,それらがバランスよく作用して組織を再生させることがわかってきた.培養中の骨髄間質細胞に他細胞より採取した培養上清を添加することによって細胞増殖能,細胞遊走能,骨形成性細胞への分化能,管腔形成能が向上することを,さらに培養上清により特に骨再生に必要な間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化および血管新生が誘導されることを示した. 本年度までにこの培養上清をビスフォスフォネート製剤由来の顎骨壊死モデル,歯周病による骨欠損モデルに適用し,それぞれの抑制効果,修復効果を確認した.またチタン製インプラント表面に培養上清成分を付着させることにより,その周囲に生じる骨形成を促進することも確認した.これらのことから骨髄間質細胞および脱落乳歯歯髄幹細胞由来の培養上清は,硬組織欠損部に直接的に投与する方法ばかりではなく,人工材料に付着させて間接的に適用する方法も有効であることが明らかにされた.これは骨欠損部に骨造成手術をすることなくインプラントが埋入できる可能性があることを意味する.さらに硬組織という領域に限らず末梢神経損傷モデルに応用し,その治療効果もあることが明らかにできている.
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今後の研究の推進方策 |
いままでの研究成果を踏まえ,今後の研究は大規模骨欠損モデルに対して応用する方向に推進する.これまでの研究で扱ったのは小規模の骨欠損での骨再生であるが,悪性腫瘍の手術後などに生じるような区域欠損を想定した大型骨欠損が対象になり,マウスやラットなどの小動物だけでなくイヌなどの大動物,また頭蓋骨欠損モデルだけでなく脛骨などの区域欠損モデルでの検討を進める.また培養上清の投与はこれまでの実験では単回投与であったが,連続的に投与する方法をマイクロポンプなどにより検討する.さらに工学部との連携により徐放性担体についても検討し,既存の骨再生に応用されている生体材料に培養上清成分が付着する様相についても調べる.すでに乳酸・グリコール酸共重合体に培養上清成分が付着しそれが骨誘導再生法の効果を高めることを明らかにしたが,これは単に浸漬したのみであり培養上清成分の放出は24時間以内に完了してしまう.この放出時間がより長期に見込める付着方法と材料について検討する.またプラズマ照射により表面加工処理を施すことによりチタン表面への培養上清成分の親和性が高まり,それによりチタンインプラント周囲に著しい骨化促進効果が得られているので,この表面処理法をチタンプレートおよびメッシュに施すことで,また上記のファイバーと組み合わせることで,これらが顎骨区域欠損部でも骨形成を期待し得る再建材料となる可能性についても検討する.また培養上清に含まれる成分の解析をさらに進め,骨形成に寄与する成分を特定する.そしてその成分を合剤化して創薬につなげられるような方向での検討もする.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品が予定より安く購入できたため.
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次年度使用額の使用計画 |
予定より多く必要になりそうな物品購入費に充当する.
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