研究課題
基盤研究(B)
宿主免疫評価およびバイオマーカーの探索として、multi-ELISA の手法にて抗腫瘍免疫活性の促進あるいは抑制に働く各種サイトカイン、ケモカインついて健常人および癌患者間における発現プロファイルを比較検討した結果、早期口腔癌における IL-6 の予後指標としての有用性が示された。また、全病期における IL-8 の予後指標の有用性が示された。レトロスペクティブ解析において早期癌ではセンチネルリンパ節生検によるステージングを導入することにより予後予測が観察期間内において 100% 可能であった。また、癌微小環境下での IL-6 の局在は癌間質であり、primary culture 細胞および癌間質の線維芽細胞の培養細胞における ELISA での検討においても、癌間質からの分泌が強く、間質と癌細胞の進展におけるかかわりが示唆された。IL-8 に関しては、局所免疫の検討を行い、癌微小環境下における M2 マクロファージおよび好中球と IL-8 の相関が示され、PBMC を用いた vitro の研究においては IL-8 の刺激により M2 マクロファージへの分化促進が認められその相関が示唆された。また、免疫抑制分子の解除に寄与する抗がん剤の探索に関しては、臨床研究を行っている樹状細胞ワクチン療法における免疫抑制の原因分子の一つである PD-Ls に対して 5-FU および docetaxel による発現抑制が認められ、同時にアロ T 細胞の分裂および IFN-γ 産生の増強が認められ、樹状細胞がんワクチンと抗がん剤の最適併用プロトコールの確立に寄与する結果と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
宿主免疫機構を反映するバイオマーカーの検索は終了し、現在その免疫抑制機構や原理の解析に着手できている。また、免疫治療の障害となる免疫抑制分子の PD-L の抑制に関して、頭頸部癌に適応がとれている 2 種類の抗がん剤を用いた解除機構が実証でき、具体的なプロトコールの作成に進める段階まできている。上記理由によりおおむね順調に進展していると考えられる。
上記 2 つのバイオマーカーに関しては、局所免疫状態とのかかわりを解明していく必要があり、各種免疫染色、ELISA、リンパ管新生、血管新生とのかかわり等について実験を進める。そのうえで、vivo での実証を進め、現在おこなっている樹状細胞ワクチン療法との併用等の臨床応用に進めていく方針である。
研究に必要な物品等の購入の結果、上記次年度使用額が生じたが、研究は概ね予定通りに進行しており、次年度の試薬、物品等に使用することとした。研究計画に基づき適切な使用を行う。
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Neoplasia
巻: 15(7) ページ: 805-814