研究課題/領域番号 |
25293415
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
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研究分担者 |
舘原 誠晃 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90380089)
徳山 麗子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20380090)
井出 信次 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (00611998)
富岡 重正 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (70188770)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 再生医療 / 分化転換 / エピジェネティクス / 組織再生 |
研究概要 |
失われた組織や臓器の再生を目指す再生医療実現のための細胞源として現在ES 細胞や成体幹細胞、iPS 細胞などを用いた研究が進められているが、生物学的制約や倫理的問題、遺伝子導入の安全性などいまだ克服すべき点は多い。そこで本研究では、再生医療の実現において必要な細胞の供給源を、従来の幹細胞ではなく、生体内において最終分化した細胞とし、これらの最終分化細胞を遺伝子導入を伴わないエピジェネティクス制御により分化転換させ、目的とする機能細胞を確保する可能性につき検討することを目的に、今年度は、特定組成の神経細胞分化誘導因子(特許出願中)の存在下にマウス骨芽細胞株MC3T3-E1 細胞の分化転換を行い、表現型の変化を経時的に観察するとともに、神経細胞の特徴である細胞突起(dendriteおよびaxon)の形成・伸長を形態学的に観察したところ、骨芽細胞とは全く形態を異にする、細胞突起を有する神経細胞様細胞への形態変化が確認された。さらに神経細胞の分化マーカーであるneurofilament 200、glial fibrillary acidic protein (GFAP)、Tuj-1(Neuron-specific class III beta-tublin)等を指標として、遺伝子発現およびタンパク質発現を検討したところ、それらの発現が確認された。さらに、この分化誘導した細胞に対して、NGF 刺激に対する電気生理学的応答性を細胞外誘導法により検討したところ、膜電位の変化が確認され、誘導された細胞は、骨芽細胞から直接あるいは間接的に神経細胞へと分化誘導された可能性が示唆された。今後はさらに詳細に分化転換について検討を加え、今後再生医療に本法を用いることが可能か否かにつき詳細に検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では今年度はマウス骨芽細胞株を用いて神経細胞へと遺伝子導入を伴わずに分化転換させられるか否か、またその細胞の分子細胞生物学的性格および機能を詳細に検討することを予定していたが、概ね順調に進められており、さらに今後は得られたデータをもとに分化転換前後の細胞を対象にゲノムワイドな網羅的エピジェネティクス解析を行うことにより、分化転換現象を詳細に検討する予定であり、これらも現時点ですでに順調に解析を進められていることから、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
分化転換前後の細胞よりゲノムDNA を抽出し、メチル化DNA 濃縮を行った後、CpG Islandmicroarray により、ゲノムワイドな網羅的エピジェネティクス解析を行い、分化転換現象がエピジェネティクな変化によるものであることを確認する。さらに骨芽細胞分化、神経細胞分化のマスター遺伝子およびそれぞれの分化マーカー分子のプロモーター領域のDNA メチル化解析を行い、骨芽細胞から神経細胞への分化転換が骨芽細胞の分化促進因子の転写抑制、神経細胞の分化促進因子の転写促進によるものか否かを検討する。また、分化転換前後の細胞において、DNA のシトシンメチル化を制御している酵素であるDNA メチルトランスフェラーゼ(Dmnt1,Dmnt2, Dmnt3)の発現レベルおよびその活性について検討し、分化転換におけるるゲノムDNAのシトシンメチル化の変化がDNA メチルトランスフェラーゼの活性変化によるものかどうかについて確認する。さらに、骨芽細胞から神経細胞への分化転換の前後に、ヒストンを抽出し、遺伝子発現の制御に重要な役割を果たしているエピジェネティクス制御の一つであるヒストンのメチル化、アセチル化状態の変化につき検討する。また、骨芽細胞を神経細胞に分化転換させる際に、予め5-azacytidine 等の脱メチル化剤により骨芽細胞を処理することにより、神経細胞への分化転換が時間的、量的に促進され得るか否かにつき検討する。これによりエピジェネティクス制御、特にシトシンメチル化の制御により細胞の分化転換をコントロールし得る可能性を検討する。続いて、ヒトおよびマウスの骨芽細胞の分離とその神経細胞への分化誘導、分化転換により得られた機能細胞の新たな表現型の維持期間の検討、分化転換により得られた機能細胞の再生医療への応用の可能性の検討等についても順次検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度からの繰越金が発生しているのは、今年度、骨芽細胞から神経様細胞に分化転換させた細胞における詳細な分子細胞生物学的性格と機能の解析を進める上で、解析が途上であるためであり、次年度以降はこの解析を進めるとともに、さらに分化転換前後の細胞におけるエピジェネティクス解析を行い、分化転換のメカニズムにつき詳細に検討するために、本来今年度に使用する予定であったこれらの繰越金を有効に使用して、細胞培養、分子細胞生物学的検討、生化学的検討、組織学的検討を進め、先行している結果とともに本研究を順調に進展させていく予定である。 次年度には研究計画に基づき、細胞培養試薬類、分子細胞生物学的検討試薬類、生化学的検討試薬類、組織学的検討試薬類、実験用動物などに物品費として使用するとともに、成果発表のための旅費、人件費、謝金、論文印刷費などに使用する、具体的には、前年度までに解析が途上であった分化転換前後の細胞の神経細胞への分化誘導の証明、さらにそれらの細胞のエピジェネティクス解析などのための細胞培養、分子細胞生物学的検討などに使用する予定である。
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