研究課題/領域番号 |
25293416
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
各務 秀明 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (80242866)
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研究分担者 |
住田 吉慶 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (50456654)
渡辺 信和 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10334278)
篠原 淳 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (90196402)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 再生医療 / 唾液腺 / 幹細胞 / 口腔乾燥症 / 細胞治療 |
研究概要 |
われわれは、これまで唾液腺上皮幹細胞の効率的な培養法を開発し、報告してきた。この唾液腺上皮細胞の培養系に対して放射線照射を行うことで、唾液腺細胞の増殖能の抑制と機能低下が見られることを明らかにした。平成25年度には、放射線照射後に細胞移植に用いられて治療効果が確認されている骨髄単核球分画(MNC)と共培養を行い、唾液腺のin vitro放射線障害モデルにおいても、(MNC)による唾液腺の機能回復が認められるかを検証した。マウスをペントバルビタールの過量投与により安楽死させ、大腿骨と脛骨を採取した。28G針を用いてHBSSバッファーで骨髄細胞をフラッシュアウトし、得られた骨髄細胞から、リンフォプレップを用いて単核球分画を分離した。単離後の細胞はcell culture insertへ播種し、各wellへ挿入した。共培養による治療効果の確認には、定量的PCRを用いて、唾液腺マーカー遺伝子の発現を解析した。cell culture insertでのMNCとの共培養により、放射線照射後にAQP-5の遺伝子発現が回復する可能性を検討した。放射線照射によって、腺房マーカーであるAQP-5と導管細胞のマーカーであるZO-1の遺伝子発現が減少した。特にAQP-5の減少が顕著であった。マウスMNCとの共培養によって細胞の増殖(または細胞死)には変化が見られなかった。一方AQP-5の発現は上昇し、腺房機能の回復に寄与するものと考えられた。一方導管マーカーの発現には有意な変化は認められなかった。これらの作用は非接触で認められたことから、MNC由来の液性因子等による効果と考えれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞のin vitroモデル、遺伝子解析、共培養の手技についてはこれまでの実績があるため、順調に研究が推移したと考えられる。細胞の機能回復に作用する物質についても検討を行なっているが、候補を絞り込める段階には達していない。候補が膨大であり、より大規模は研究が必要と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで萎縮唾液腺に対する細胞治療の可能性については報告されている。しかしながら、in vivoの実験のみでは詳細は機序について解析することが困難であった。われわれの確立したin vitro唾液腺萎縮モデルは臨床における条件を良く反映するとともに細胞の共培養が可能であり、今後もメカニズムの解析において有用なツールになるものと期待される。一方、細胞治療による効果の特異性を探るために、さまざまな細胞を用いて障害された唾液腺細胞に対する効果を検討したところ、細胞間での違いはわずかであった。したがって、今後はさまざまな細胞に共通する治療メカニズムに着目する必要が有るものと考えられた。また、今後の臨床応用を目指してヒト細胞を用いた治療効果の確認実験についても取り組む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に必要となる可能性のある実験動物や試薬を購入できるよう、全額を使い切ることは避けた。実質14万円程度が予備費となり、2014年度へ繰り越された。 次年度に繰り越された金額は動物や試薬の購入にて使用される予定である。
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