研究課題
頭頚部癌に対する放射線照射により唾液腺は萎縮し、口腔乾燥が引き起こされる。患者は、口腔乾燥により咀嚼、嚥下、会話の障害のみでなく、う触や歯周疾患の多発などの症状に苦しめられるため、生活の質(QOL)は著しく低下する。しかしながら、現在のところ唾液腺の萎縮に対して満足できる治療法はない。本研究では、幹細胞による萎縮唾液腺の新たな治療法の開発を目的とした。細胞移植による唾液腺再生では、骨髄液中の単核球細胞、骨髄間質細胞(間葉系幹細胞)、および臍帯由来間葉系幹細胞移植による影響について、in vitroおよびin vivoの実験系を用いて検討を行った。骨髄単核球細胞は培養を行わず、分画を採取後移植を行った。また、臍帯由来間葉系幹細胞では、ヒト由来の凍結細胞を用いて、移植を行った。その結果、培養を経ない単核球細胞、凍結解凍後のヒト臍帯由来間葉系幹細胞においても、間葉系幹細胞と同等の唾液腺機能の回復が認められた。放射線照射の影響についてモデルを用いて検証したところ、特に腺房細胞のAQP-5遺伝子の発現低下が認められ、導管マーカーの発現低下はわずかであった。このことから、放射線障害の改善のためには、腺房細胞の増殖や機能回復が重要と考えられた。in vitroにおける唾液腺細胞と骨髄単核球細胞および臍帯由来間葉系幹細胞との共培養によって,唾液腺腺房マーカー遺伝子の回復が認められ,その程度は骨髄由来間葉系幹細胞とほぼ同じであった。このことから、細胞移植による機能回復は、唾液腺腺房細胞の機能を改善することで、唾液量の回復が認められるものと考えられた。その一方で唾液腺細胞の増殖に与える影響はわずかであった。尾静脈から2回の細胞移植を行ったが,唾液腺に生着した細胞数は少なかったことから、唾液腺の機能回復には移植された細胞由来の増殖因子あるいはmicroRNA等の関与が示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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