研究課題/領域番号 |
25293422
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
須田 直人 明海大学, 歯学部, 教授 (90302885)
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研究分担者 |
太田 正人 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (70313228)
中原 貴 日本歯科大学, 歯学部, 教授 (10366768)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯根 / 再生医療 / ヘルトビッヒの上皮鞘 / 歯根吸収 / 歯周組織 |
研究概要 |
本年度は、酵素法とoutgrowth法で得られたヒト歯小嚢および歯根膜細胞の幹細胞特性を比較解析した。15~28歳男女の智歯およびその付着組織から歯小嚢, 歯根膜を採取し、酵素法(EZ)とoutgrowth法(OG)により歯小嚢(DF)および歯根膜細胞(PDL)を分離した。EZではcollagenase/dispase混合溶液による酵素処理後、10-cm dishに1×10⁵個で播種し、OGでは各組織片を静置培養した。15%FBS含有DMEM/F12培養液で継代数3~4まで細胞を維持し、それぞれDF-EZ群、DF-OG群、PDL-EZ群、PDL-OG群とした。 分化誘導の結果、すべての群で各染色による陽性像が認められたが、EZ群で特に石灰化物と脂肪滴の形成量が多かった。各種幹細胞マーカーの発現解析により、血管内皮接着分子であるCD29, CD106, CD146がEZ群で高い陽性率を示し、Nanogの発現はDF群で高かった。RT-PCRの結果、幹細胞マーカーの発現はEZ群で高く、歯根膜マーカーの発現はPDL-OG群で最も高かった。細胞増殖能は、PDL群よりもDF群で有意に高かった。以上の結果より、EZ群はOG群より幹細胞の数が多く、pericyte様の表現型を有することが示唆された。 ところで、歯根-歯槽骨複合体が機能単位として形成されるためには、伸長している歯根の周囲に骨形成が生じる必要がある。そこで本年度は、骨形成を効率的に行なうための方法として、徐放性ゲルとBMP2および天然低分子化合物ホノキオールの組み合わせを頭蓋骨欠損マウスモデルにて検討した。その結果、コラーゲンゲルを用いた場合とアクリロイル化コレステロール結合プルラン(CHPA)ナノゲルを用いた場合、後者で有意に修復時間が短縮された。また、ホノキオールを組み合わせると全てのマウスで効率よい骨修復が観察され、BMP-2の骨修復活性の個体差が解消された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究計画の初年度として、歯小嚢と歯根膜に存在するstem cellの特徴に関して検討した。歯根の形成は、歯小嚢と歯根膜と密接な関係を持つことが知られ、stem cellの様々な特性を明らかになった点は、一定の成果が得られたものと評価できる。 特に歯根周囲の骨組織形成に関して、徐放性ゲルとBMP2および天然低分子化合物ホノキオールがanabolicな効果を持つことを明らかにした点は評価される。 反面、歯根形成を担う歯の象牙質やセメント質形成に関する解析が十分でなく、次年度に強化が必要な内容と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に向けて、本年度に引き続きstem cellの研究を継続していく。すなわち、歯小嚢や歯根膜の採取、分離法の違いによるセメント質関連遺伝子発現を解析する。また培養細胞の移植により形成される硬組織様構造物を解析し、形成量や形成組織の違いについての解析する。さらに、歯根膜幹細胞、歯小嚢幹細胞中のneural crest由来細胞の割合の違いを検証し、異なった由来を持つ細胞間の機能についての解析していく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に計画していた歯根象牙質形成に関する実験がまだ準備段階にあるため、次年度使用額として計上した。 前年度に計画していた歯根象牙質形成に関する実験を開始する。
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