研究実績の概要 |
Wnt5aが骨代謝回転を維持する分子基盤は明らかでない。そこで本申請課題ではWnt5aがどのような分子を介して骨代謝回転を制御するかを明らかにし、Wnt5aによる骨代謝回転制御機構の分子基盤を確立する。 (1) Wnt5aによる骨芽細胞分化促進作用の解明:Wnt5a-/-マウス由来の骨芽細胞は、石灰化不全を呈した。そこで、Wnt共受容体の発現を調べたところ、Wnt5a-/-マウス由来の骨芽細胞において、Lrp5/6の発現が著しく低下していた。Wnt5a-/-マウス由来の骨芽細胞において、Lrp5/6を過剰発現すると、石灰化不全が回復した。以上より、Wnt5aはLrp5/6の発現を亢進し、Wnt古典経路による骨芽細胞分化を促進することを明らかにした(Sci Rep 4, 4493, 2014)。 (2) Wnt16による破骨細胞分化抑制作用に対するWnt5aの効果の解析:Wnt16は、β-カテニン経路を介さず、破骨細胞分化を抑制することが報告された。そこで、Wnt16による抑制作用に、Osteoprotegerin (OPG)が関与するかを検討した。OPG-/-マウスから調整した培養においても、Wnt16は破骨細胞形成を抑制した。さらに、Wnt16の抑制作用は、Wnt5aの添加により抑制された。(Biochem Biophys Res Commun 463, 1278-1283, 2015)。 (3) 破骨細胞が分泌するsclerostin (Sost)発現抑制因子の解析:ラットの骨肉腫細胞であるUMR106 は、Sostを過剰発現する。破骨細胞の培養から調整した培養上清の存在下でUMR106を培養したところ、Sostの発現が抑制された。破骨細胞の培養上精には、サイトカインX(X)が多く含まれること、中和抗体を用いて、破骨細胞の培養上精のXを中和すると、Sost抑制効果が消失した。以上より、破骨細胞はXを分泌し、Sostの発現を抑制する。これにより、Wntシグナルを高め、骨形成を誘導することが示唆された(論文投稿中)。
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