研究課題/領域番号 |
25293425
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西村 英紀 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80208222)
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研究分担者 |
浅野 知一郎 広島大学, その他の研究科, 教授 (70242063)
安孫子 宜光 日本大学, 歯学部, 教授 (70050086)
大山 秀樹 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (90280685)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CKD / 軽微な慢性炎症 / メサンギウム / 心腎連関 / 共培養 / マイクロアレイ / lipocalin-2 / eGFR |
研究概要 |
腎機能異常は虚血性心疾患に対する強力な危険要因(心腎連関)であり、中でも慢性腎臓病(CKD)の概念は、糖尿病性腎症の増加からとりわけ重要とされる。近年、CKDの進行に慢性炎症が関与するとの考えが導入され、注目されている。そこでCKDの進行に果たす炎症の役割を臓器固有細胞-浸潤炎症細胞相互作用の観点から解明するため、臓器固有細胞としてメサンギウム細胞を、浸潤炎症細胞としてマクロファージを取り上げ、両細胞を共培養し内毒素刺激した際に発現変動する遺伝子群をマイクロアレイの手法を用い、網羅的に解析した。その結果、内毒素刺激マクロファージとの共培養でメサンギウム細胞にCXCL1、 2,、5、 CCL2、 20などのケモカイン、serum amyloid A、lipocalin-2遺伝子等が強発現することを見出した。さらに、リアルタイムPCRによりこれら遺伝子の発現増強を確認した。また、培養上清中への蛋白レベルでの分泌増強作用も確認した。その中でもとりわけ強い発現増強を認めたlipocalin-2に注目し、解析を進めた。lipocalin-2遺伝子発現はメサンギウム細胞においてリコンビナントTNFと内毒素添加で相乗的に上昇したことから、内毒素刺激マクロファージ由来TNFが発現上昇に重要な役割を果たすと考えられた。そこでlipocalin-2分子と腎機能異常との関連性を疫学的に検討するため、健診者を対象とした疫学調査を実施した。血清lipocalin-2はクレアチニンと正の相関を、eGFRと負の相関を示した。ロジスティック解析の結果からlipocalin-2はeGFR、sTNFRII、uric acidと強く相関した。この結果は被験者から糖尿病を除いても同様であった。以上から、lipocalin-2は腎機能異常を予知する上で有用かつユニバーサルなマーカーとなり得ることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請時点で歯周医学の分子基盤を臓器固有細胞-浸潤炎症細胞間相互作用の観点から解明するため、以下に示す3つの細胞間相互作用を検討するとした研究計画を立てた。①メサンギウム―マクロファージ相互作用、②脂肪細胞―マクロファージ相互作用、③膵アルファ、ベータ細胞―マクロファージ相互作用である。25年はそのうち①について研究を完結し、成果発表を行った。また、②についても脂肪細胞に強発現する遺伝子を取り上げ、本遺伝子を欠損させたマウスにおける表現系の解析を継続中であり、次年度中に成果発表する予定にしている。さらに③に関して、研究に必要な細胞を25年度中に揃え、準備を進めている。26年度早々にも開始の予定である。以上から、4年間の計画で申請した本課題は当初の計画以上に順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、内毒素刺激マクロファージ存在下で脂肪細胞に強発現する遺伝子を欠損させたマウスの解析を進めている。炎症状態で強く発現する遺伝子を欠損させることで、本遺伝子欠損マウスに高脂肪食を与えた際の耐糖能の変化、炎症細胞浸潤の動態、脂肪や肝臓における炎症や代謝に関わる遺伝子発現状況を検討中である。最終的に確定的な結果を得た時点で、成果発表を予定している。 一方、膵島への炎症の関与も示唆されることから膵島で最も多いアルファ細胞、次いで多いベータ細胞と炎症性細胞(マクロファージ)の相互作用について検討し、遺伝子解析を行う計画を立てており準備を進めている。
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