研究課題/領域番号 |
25293425
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西村 英紀 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80208222)
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研究分担者 |
浅野 知一郎 広島大学, その他の研究科, 教授 (70242063)
山下 明子 九州大学, 大学病院, 助教 (70511319)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肥満 / インスリン抵抗性 / 歯周炎症 / 樹状細胞 / 脂肪組織炎症 / 膵アルファ細胞 / 膵ベータ細胞 |
研究実績の概要 |
脂肪細胞とマクロファージの共培養系を内毒素刺激することで、脂肪細胞において成熟樹状細胞の遊走に関与するケモカインccl19の遺伝子発現が著しく亢進することを見出した。これを受け、ccl19が肥満、インスリン抵抗性に果たす役割をccl19受容体CCR7欠損マウスを用いて検討した。CCR7欠損マウスでは高脂肪食負荷により肥満が惹起されず、インスリン感受性も正常であった。コントロールマウスでは高度なCD11c陽性細胞浸潤が観察されたが、CCR7欠損マウスでは炎症性細胞浸潤が観察されなかった。また、炎症性サイトカインの発現も通常食負荷のコントロールマウスと同程度であった。さらに、CCR7欠損マウスでは、脂肪細胞のサイズがコントロールと同程度であり、脂肪肝も惹起されなかった。高脂肪食負荷CCR7欠損マウスで肥満が惹起されない機序を検討した。本マウスは食餌摂取量はWTマウスと同程度であったが、寒冷下で飼育することにより熱産生が亢進した。すなわち、成熟樹状細胞の浸潤が回避された状況では、熱産生が亢進し高脂肪食負荷によっても肥満が惹起されないことを明らかにした。重度歯周炎では循環血中活性化樹状細胞が増加することが報告されている。歯周病によって惹起される脂肪組織炎症、インスリン抵抗性の機序の一端を明らかにした。 一方、近年膵ベータ細胞においても炎症が惹起され、機能障害が起こることが報告された。膵ベータ細胞とマクロファージ、膵アルファ細胞とマクロファージの共培養系を確立し、内毒素刺激の有無による両細胞での遺伝子発現解析を行った。今後、パスウェイ解析を行うとともに、機能障害に関わると考えられる遺伝子に注目してその役割を解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
脂肪細胞―マクロファージ共培養系において脂肪組織炎症を強力に惹起する因子のみでなく、肥満そのものの成立に重要と考えられる炎症惹起因子を明らかにした。その機序を熱産生のレベルで解明した。当初計画にある重要なケモカインの解析が充分に達成できた。本研究成果は論文として受理された。 膵アルファ細胞とベータ細胞における炎症との関わりを解明する検討においても予定通り、遺伝子発現解析が終了した。今年度、その結果を受け、機能面から解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
炎症脂肪組織において補体B因子が高発現すること、本因子がヒト肥満、インスリン抵抗性、炎症状態と有意に相関することを予備実験で確認している。そこで、補体B因子過剰発現マウスを用い、炎症脂肪組織で産生が亢進する補体B因子の役割を解明する予定である。 一方、前年度膵アルファ細胞およびベータ細胞とマクロファージの相互作用でアルファ、ベータ細胞で発現変動する遺伝子群を確認している。機能障害に関わる分子を同定し、炎症とインスリン分泌、血糖上昇との関連性について検討を行う予定である。
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