研究課題
成熟脂肪細胞とマクロファージの相互作用により成熟樹状細胞の遊走に関わるccl19遺伝子が高発現したことから、本ケモカインに対する受容体(ccr7)欠損マウスを用いて肥満・インスリン抵抗性に果たす本分子の役割を検討した。結果、ccr7欠損マウスは高脂肪食負荷で肥満を呈さず、インスリン抵抗性や脂肪組織炎症が惹起されず、熱産生が亢進することを明らかにした。本結果に基づいて、歯周炎症で樹状細胞がどの程度活性化されるか、脂肪細胞特異的ccl19マウスで同様の病態が観察されるか否かを明らかにする研究に発展させることとした。さらに、マクロファージと共存する脂肪細胞で補体B因子の遺伝子発現が著明に亢進したことから、脂肪細胞特異的に補体B因子を高発現するマウスを作製し病態を観察した。本マウスオス個体では通常食でもより体重増加が観察されたことから、補体B因子が何らかの形で肥満の病態形成に関わる可能性が示唆された。近年膵島においてもマクロファージの浸潤が報告されたことから、膵β細胞とマクロファージ、膵α細胞とマクロファージの共培養系を確立し、各々を内毒素刺激することで発現変動する遺伝子群を内毒素非存在下で発現している遺伝子群とマイクロアレイ法にて比較・解析した。興味深いことに、遺伝子の変動は膵α細胞よりもβ細胞で大きいことが明らかとなった。さらに、膵β細胞においてアポトーシスを促進する作用のある分子が強発現することを見出した。以上から、膵島にマクロファージ浸潤が起こった際には、α細胞に比べβ細胞がより影響を受けやすいこと、またβ細胞死がより促進される環境に曝される可能性があることが明らかとなった。本現象は2型糖尿病におけるβ細胞機能異常のみならず、1型糖尿病の発症に関わる可能性がある重要な現象であると考えられた。本分子を標的とした新規治療法確立の可能性を示唆する重要な知見を得た。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
Obesity
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doi: 10.1002/oby.21127.
Diabetol Metab Syndr
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doi: 10.1016/j.archoralbio.2015.05.013.